地方の私大を公立化する「ウルトラC」の成否 大学、学生、自治体みんながハッピー?

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地域ごとに様々な事情はあり、一概に公立化のよしあしを断ずることはできない。ただ、仮に教育内容や経営努力に問題がある大学でも安易に公立化できてしまうとしたら、それに歯止めをかけることはできるのか。

公立化に必要な「設置者の変更」の許認可権を持つ文科省と、交付税を所管する総務省は「課題があるのは確かだが、今の制度ではどうにもできない」と口をそろえる。

「書類に問題がなく、要件が整っていれば、認可しないわけにはいかない。ある県に公立大が四つ、五つになるからといって、地元にニーズがあって、大学が減るのは困ると言われれば、拒否することはできません」(文科省)

「学校の設置許可を出すのは文科省なので、我々の立場でできるのは『助言』にとどまります」(総務省)

公設民営型は予備軍?

これまで公立化を実現、もしくは予定・検討している私立大学は公設民営型が大半。前出の大学関係者は、「設立に自治体がかかわっていれば、大学側が『撤退したら資金を出した自治体の責任も問われるのでは』と、言葉は悪いが『脅し』をかけられる」と話す。

となると、いったい全国にどれだけ公設民営型の大学があるのか気になるところだが、文科省は「把握していない」と言う。そもそも公設民営というのは法律的な定義ではなく、一般にそう呼ばれているというだけ。設立時の書類にも資金の出所を記載する欄がないので、把握のしようがないのだという。

「設置者の変更が申請された時に初めて、設立の経緯を知るケースがほとんどです」(文科省)

公立大は平成に入ってから倍増し、今年4月時点で88校と、国立大の86校を上回るまでになった。国立大は厳しい予算カットにあえぎ、私立も私学助成金が先細る中で厳しい経営を迫られている。そうした中で、公立大だけ「文科省の締め付けの枠外にあって不公平」という指摘もある。

問題の根底にあるのは、少子化が進む中で、全国あるいは地域でどのぐらいの大学があれば適正規模といえるのか、国立、公立、私立それぞれがどう役割分担をするのか、公的資金をどう振り分けるのかについてグランドデザインがないことだ。

減少傾向が一時的に止まり「踊り場」にある18歳人口が、再び減少期に入るとされるのは18年。残された時間はそう長くない。

(編集部・石臥薫子)

AERA 2016年12月19日号

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