「死因は家」とならないために
高気密・高断熱が健康寿命を伸ばす
「窓をペアガラスにした高気密・高断熱の家では、冬場の窓の結露が少なくなるため、空気中に飛散するカビの胞子の量が減ることで、ぜんそくに良い影響を与えると言われています。また暖かい家で過ごせば着衣の量が減りますので、肌に対する化学繊維やゴムなどの刺激が大幅に少なくなります。その結果、皮膚の状態が改善されることが、調査の結果わかっています」(以下グラフ参照)
また住まいが暖かくなると、寒い冬に縮こまって過ごす時間が減り、日常の運動量が向上する。日常的な運動が健康に良い影響をもたらすことは医学的にも常識となっており、とくに運動量の減少が寝たきりにつながる高齢者にとっては室温の向上が大切となる。
暖房費が4分の1程度
断熱等性能等級の高い家を
健康面だけでなく、高気密・高断熱の住宅は、冷暖房費の省エネルギー効果が高まることから、経済的なメリットももたらしてくれる。
「昔ながらの木造住宅に比べて、現在の断熱性の高い家は4分の1程度の暖房エネルギーで済みます。暖房費で言えば冬に毎月2万円かかっていたのが、5千円で済む計算です。また、『断熱の家は夏に暑い』と思う人もいますが、それは誤解で、きちんと西日対策をした高断熱の家は、夏場の冷房効率も高めてくれます」
高気密・高断熱の住宅づくりは、すでに出来あがった建物をリフォームするよりも、新築の時点で計画的に施工することで、導入費用を抑えることができると岩前教授は言う。
「新築時に100〜200万円をかければ、現在の最新の技術を使った高気密・高断熱住宅を建てることができます。普通自動車を1台買うぐらいの値段で、そこに住む家族全員の健康状態を向上させることができ、なおかつ省エネ効果も非常に高いのですから、日本の家はこれからすべて高気密・高断熱の家にすべきだと私は考えています」
建売住宅の場合でも、「断熱等性能等級」基準の高いレベルを取得している物件を選ぶべきだろう。何しろ命にかかわることなのだ。
住宅は人生最大の買い物だけに、「立地」、「広さ」、「間取り」、「住環境」……とこだわりのポイントがいくつもあるだろうが、ここに「高気密・高断熱」をぜひとも加えていただきたい。それも、高い優先順位で。