「死因は家」とならないために
高気密・高断熱が健康寿命を伸ばす

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現在の日本では、夏に熱中症で複数名が救急搬送されるとしばしば全国ニュースになり、注意喚起がなされる。一方、冬に浴槽で溺死者が出てもニュースにはなりにくい。年間の死者の数で言えば、「家庭内での溺死者」が「熱中症による死者」の数十倍になるにもかかわらず。

ヒートショック関連死は1万7000人
温度低下が遠因の死者は約12万人?

5160人

これは、2015年に家庭内で溺死した人の数だ。1日あたり約14人が浴室で亡くなっていることになる。交通事故で亡くなった人の数4113人をゆうに超えている。

近畿大学建築学部長の岩前篤教授は、「それらの事故の大きな要因となっているのが、家庭内の室温の差によるヒートショックです。日本で、1年のうち死亡率がもっとも高まる季節は冬。風呂での溺死、家庭内での転倒、窒息死などの家庭内事故は、夏に比べて冬の期間のほうが明確に増えます」と語る。

近畿大学
建築学部長
岩前篤教授

ヒートショックとは、急激な気温変化によって血圧が大きく変動し、失神や心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な症状を起こすことを言う。住宅内で暖房をしていない風呂場の脱衣所やトイレは、真冬には10度以下に冷え込む。すると暖かい部屋からそこに行ったとき、寒冷刺激により血管は収縮して、血圧が急激に上昇する。その状態で40度以上の風呂に入ると、今度は血管が拡張して血圧が急降下し、そのショックで失神や心筋梗塞を起こすのだ。風呂での溺死の多くが冬に起きており、そのうちかなりの数がヒートショックによるものであると言われている。

5000人どころか、浴室内でのヒートショック関連死は1万7000人に上るというデータもある。これは、2011年のものだが、東京都健康長寿医療センター研究所が全国の消防本部の協力を得て実施した調査結果に基づく推計で、より実情に即したものだと言える。さらに、ヒートショックは浴室だけに限らない。

※2015年、厚生労働省人口動態調査「家庭における主な不慮の事故」「不慮の溺死及び溺水」
※2015年、全日本交通安全協会
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