ライター戦国時代!異業種参入組の正攻法は 「優雅なノマドワーク」は都市伝説にすぎない

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そんな中、全然関係ない世界にいた人、たとえば主婦だったりこないだまで学生だったり、会社辞めて無職といった人たちの2000円ライター層が、こつ然と姿を現した。

こういう人たちはバックボーンが文章業界ではないので、武者さんがセミナーでスキルアップのために「企画とか校正力大事」みたいな話をしても、全然わからないんだと思う。企画や校正など、いわゆる「制作」の仕事を見たことがないからだ。共通言語を持たない人に、話だけでノウハウは教えられない。

異業種参入組ならではの強みがある

前出のように、ライターとしてのスキルアップのために僕が教えられるノウハウは何もないのだが、でも生え抜きの文章業界の人よりも、僕みたいに異業種参入のほうがもしかしたら伝えられることがあるかもしれない。

異業種参入組としてライターをやっている人を見て、もったいないなと思うのは、無理して今のメディア業界に馴染もうとしているところである。それだと、以前のキャリアが全然役に立っていない。いい歳して「何にも知りません宜しくお願いします」では、歳食ってる分だけ新卒より使いづらい。自分がやってきたことが足がかりにできるような分野や方向性に、活動を絞るべきだろう。

新しい分野に進出したいなら、普遍的な問題がいっぱいある分野で、他のライターがいないところに行くべきである。スマホだIoTだとフラフラしても、人がいっぱいいるところでは、自分がつかまれるハンドルは、ちょこっとしかない。最先端ごっこがしたいだけなら止めないけど。

それからライターというテンプレートなスタイルにこだわりすぎなんじゃないか、というところも気になる。Macbookをスタバで広げてドヤリングみたいな仕事の仕方は、都市伝説だから。ちゃんと稼げてるライターは都心にコワーキングスペースを借りて、そこを拠点に仕事するもんですよ。

まあこれはライティングのスタイルにもよると思うが、僕は主に家でしか原稿を書かない。家でしか集中できないわけではなく、その逆である。筆が進まないときにいくらパソコンの前でウンウン唸っても、進まないものは進まない。こういうときに家なら、気分転換できるものがたくさんあるのだ。その辺を掃除したり、晩御飯の仕込みをしたり、買い物に行ったりジョギングしたり、いろいろできる。書いてる途中で中断してPTAやったり子供会やったり自治会やったり、そういうこともできる。

そうやって別のことをするうちに、行き詰まってた部分の先が見えたり、別の切り口が見えたりするのだ。結果的に、ウンウン唸って5時間かかった原稿より、他のことしながらどっちが片手間だかわからない5時間の原稿の方が、バランスが良かったりする。さらに別の書くネタも拾えたりする。

自分に最適なスタイルを見つけるまでは数年かかるが、人と同じ方法が良いという先入観は捨てた方がいいだろう。せっかくフリーなんだから。いろいろ試したけどフリーでいることが最適解、という人じゃないと、フリーで居られない。だから「これからフリーで食えるようになる」とかいわれると、「大丈夫?」とものすごく心配になってしまうのだ。

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小寺 信良 映像技術者、コラムニスト

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こでらのぶよし / Nobuyoshi Kodera

コラムニスト/映像技術者/インターネットユーザー協会代表理事。1963年宮崎県出身。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、ライターとして独立。AV機器から放送機器、メディア論、子供とITの関係まで幅広く執筆活動を行う。主な著書に「Ustreamがメディアを変える」(ちくま新書)、「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)など。WEBではAV Watch、ITmedia、価格.com にてコラムを好評連載中。夜間飛行より毎週金曜、メールマガジン「金曜ランチボックス」を発行中。

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