（第25回）＜寺田恵子さん・前編＞いじめで胸の奥が痛んだ…

●歌手になる夢は幼い頃から

　高校一年の時に、同じ学年の子と初めてバンドを組みました。プロの歌手になろうと思っていたから、バンドに入りました。
　歌手になりたいという夢は子どもの頃からずっとありました。歌は好きだったし、楽器も好きだった。「この子は音楽の道に進ませたほうがいい」と、最初に言われたのは幼稚園の先生から。この頃、ずっとカーテンの脇で楽器をいじっていたり、歌をうたったりしていたらしいのです。
　私は、学校の先生には恵まれていたと思うのです。暴力をふるう先生もいっぱいいたけど、基本的に愛情をたくさん注いでくれる人たちだった。その幼稚園の先生の名前もいまだに覚えています。よく、一緒に遊びに行ったり、旅行に出かけたりしました。

●いじめられっ子からいじめっ子になる

　小学校のときもすごくいい先生がいました。
　三年になって不良グループに入ってね（笑）。それまで、一、二年のときはすごく暗い子で、友達もできなくて……。好きな子もいたんだけど、席替えで隣の席になった時に、「寺田さんは暗いから嫌だ」とみんなの前で言われたり……。自分を変えなきゃダメだと思い、不良グループに入りました。
　不良グループに入る前は、私も上級生にいじめられていました。毎日、学校帰りに待ち伏せされたりして、年上にやられていた。その反動で、不良グループに入って強くなろうと思った。でも、自分がいじめる側になって女の子をよってたかっていじめたときに何が楽しいんだろう？って。いじめた後にすごく嫌な気分になった。楽しくないし、罪悪感というか、空しいというか。胸の奥が痛くて、つまるのです。それで、辞めようと思って。

　今度はいじめられている側に立ったわけ。クラスで仲間はずれにされている子がいると、その子と一緒に御飯を食べたり、休み時間一緒に遊んだり。そうしていると、気がついたら今度は自分がいじめられるようになる。女の子って、男の子と違ってすごく陰湿だから、どんどんターゲットを変えて、その子を一人にさせるように裏でいろんな細工をして、本当にひとりぼっちにさせられてしまうんです。
　休み時間に私が一人でポツンとしていたら、先生がそれに気がついて、休み時間になるたびに呼んでくれ、男の子のグループに入れてくれたのです。そこでドッチボールをしたり。そんな風に男の子と仲良くしていると、今度は女の子がうらやましがって寄ってくる（笑）。先生はちゃんと見ていたんじゃないかと思います。

●人との距離の保ち方、つきあい方を悟る

　当時は、そんなに裕福な時代じゃありませんでした。御飯が食べられず、洋服も買えないような子がいた。そういう子は「昨日と同じ格好してる」「くさい」と言われていじめられる。子どもは残酷だからみんなでいじめる。でも、見た目がそうでも、話すと普通の子だったりするし、一方で、いじめられるにはそれなりの理由があるというのもわかる気がすることもある。口の聞き方が悪かったり、いじめられているから卑屈になっていたり……。そんな中でも、一緒に遊んでいくうちに、「それはいけないよ」と伝えたり、この子のここがいけないところ、ここがいいところというのが見えてくる。もし、本当に自分がその子を嫌だと思ったら、いじめるんじゃなくて、距離を置けばいいんだって。そんな風に考えていました。
　でも、やっぱり私は、いじめるんだったら、いじめられるほうがいいな……。