夢より自由。25万字の小説を書く異彩経営者

インテリジェンス創業者、鎌田和彦氏の好き嫌い(下)

本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのがこの対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出しているの か。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」といってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。
第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。
こうした好き嫌いの対話を通じて、優れた経営者が戦略や経営を考えるときに避けて通れない 直観とその源泉に迫ってみたい。対談の第1回は、僕にとって長年の友人である鎌田和彦さんにお話を伺った。鎌田さんは人材企業インテリジェンスを起業した後、経営者として長年同社に携わり、現在は中古不動産事業 やベーカリー、レストラン経営を展開。さらには先日、初のエンターテインメント小説を上梓された異彩の人物である。

 対談(上):「好き嫌いで人事評価」はアリかナシか?

お仕着せが嫌い、ワインと共感が好き

楠木:今はインテリジェンスを離れていろいろな事業をされていらっしゃいますが、新丸ビルにあるベーカリー「ポワンエリーニュ」をつくられましたね。

鎌田:事業の手触り感みたいなものが欲しかったのでしょうね。「人材派遣業にとっては、毎日仕事をしてもらう方々がお客様だ」というとらえ方をすれば、彼らに就業機会というサービスを提供していたという言い方もできます。でも、実際仕事をしている人たちは、「インテリジェンスから就業機会というサービスを受けている」という認識はない。その点ベーカリーは、最終消費者に買ってもらって、食べてもらってなんぼです。BtoC最前線ですから。

楠木:僕が当時、鎌田さんと話をしていたら、「普通の人ができる仕事をやろうと思ってました」という言い方をしていましたね。割と僭越(笑)。でも、意味するところは「手触り感」ということですね。シンプルでわかりやすくて、お客さんに接している商売。立ち上げた頃はインテリジェンスにいらしたわけですが、経営のお仕事が忙しくても、世の中に直接かかわるような仕事をやりたいほうなのですか。

鎌田:正直、出発点は投資的だったし、今も事細かに自分で考えてやっているわけではありません。僕にとってのベーカリーは「何となく、そういうことがやれている自分に満足」みたいな感じでしょうか。一番時間をかけているのは、中古マンションの再生などを手掛けているアート・クラフト・サイエンスですね。

日本は他の先進国と比べて極端に中古住宅の流通量が少ない。僕が注目したのはその点です。実際、少子高齢化が進んでいく日本マーケットで新しいものを作り続けるわけにはいきませんよ。むしろ、再調達が難しいロケーションに建つ中古マンションを最新設備で再生していくほうが合理的だし、リユース、リサイクルといった時代感にもマッチしているわけです。最近はリカサ(ReCasa)というパッケージリフォームの新サービスも開始しています。

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