社会不適応者の僕らが、学者になるまで

「新しい市場のつくりかた」著者、三宅秀道氏の好き嫌い(上)

本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのがこの対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出しているのか。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が 好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」といってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。
第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。
「好き嫌い」について経営者の方々と話をしてみようという、この対談であるが、今回は経営者ではなく、僕と同業の三宅秀道さんをお招きした。三宅さんの『新しい市場のつくりかた』を最近読んで感銘を受けた。三宅さんの好き嫌いや、研究観、経営論を伺った。

きっかけは阪神・淡路大震災

楠木:初めてお目にかかるのに非常に僭越ですけれど、僕は三宅さんには自分と同じにおいを感じていました。『新しい市場のつくりかた』(東洋経済新報社刊)を読ませていただいて、まず内容がおもしろい。しかも仕事への構えみたいなものが自分によく似ているように思えて、興味がわきました。阪神大震災がきっかけで、震災からの復興の役に立とうと思われたわけですね。

三宅:僕の実家は神戸で、1995年1月の震災のときは大学3年でした。当時のスケジュールだと就職活動が始まる時期です。東京の大学に通っていたし、実家はたいした被害を受けませんでしたが、知り合いの多くに連絡が取れなくなりまして。故郷に帰ってみたら、母校の近くは焼野原でかなりショックを受けました。物理的に被害がひどいところは生存の危機ですし、そうでなくても中小企業は深刻に見えました。

産業組織のシステムが一部でも崩壊したら、ほかにも波及して仕事ができなくなりますよね。それがきっかけで地域産業コミュニティを連鎖的にうまく生かせるような研究ができたらと思い、産業集積の研究をすることにしました。まあこれは、きれいに言ったバージョン(笑)。震災の衝撃で就活シーズンがパニックのままで過ぎちゃったので、大学院に逃げ込んだところもあったと思います。

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