「殻を破る起業家」は同類とはつるまない

日本の革新者100人共通のキラースキル

──パターンのほとんどが民間主導ですね。

国全体で政策立案をし財政を発動していくやり方とは別に、民間主導のユニークなモデルで、できれば財政を使わないで解決にアプローチしていく。しかもビジネスとして収益を上げながら社会課題を解決する。解決に向けボトムアップ型のイノベーションがないと、どうしても息が詰まるし、おカネも足りなくなる。

──収録の実例は確かに革新者といえるような人々です。

この本は事例集ではないので、ほとんどストーリー起こしをしていない。むしろスキルを持った人が領域を超えてネットワークを作ることを重視している。フルストーリーを掲載したのは8人だけだ。

齊藤義明(さいとう よしあき)/1988年北海道大学経済学部卒業、野村総合研究所入社。NRIアメリカ ワシントン支店長、コンサルティング事業本部戦略企画部長、イノベーション・人材戦略担当部長などを経て、2012年9月から現職。政策や企業経営コンサルティングの現場で、これまで100本以上のプロジェクトにかかわる。(撮影:尾形文繁)

──今や有名な人もいます。

たとえばスノーピーク社長の山井太さん。本格派アウトドアライフを創造する企業で新潟県三条市に本社がある。彼は年間60泊もキャンプに出掛ける。経営モデルも面白いし、それも日々変化していく。上場した一社で、今、東京証券取引所第一部の会社になった。

介護・福祉業界に新風を巻き起こしているのがNPO法人Ubdobe(ウブドベ)の代表、岡勇樹さんだ。クラブでDJやライブの合間に高齢者介護や障害者福祉の講演を挟むイベントを仕掛ける。また「子育て世代の共働き夫婦」を狙い撃ちして人口を2.5万人も増やした千葉県流山市市長の井崎義治さん。あるいはフィリピンの貧困街で100のビジネスを立ち上げる国際起業家のワクワーク・イングリッシュ代表の山田貴子さんもず抜けている。

このほか四駆の草刈り機の指名買いで評判のキャニコム会長の包行均さん、100年の時間軸を持つ鎌倉投信社長の鎌田恭幸さん、飼い主の「涙を減らす」保険のアニコム ホールディングス社長の小森伸昭さん、さらに1粒1000円のイチゴを生み出すIT駆使の農業法人GRAの岩佐大輝さんの8人。

ベテランの暗黙知をITデータに

──岩佐さんは津波被災地の革新者ですね。

とびきりのイノベーターだ。被災地、宮城県山元町でソフト開発を手掛けていて、地元名産品のイチゴ作りのノウハウは何も持っていなかった。勝負勘のある人で、イチゴ作りに転身していく。それもベテランの暗黙知をITデータにして、風、温度、水、光をすべてコントロールする大規模ハウス農業を手掛ける。2〜3倍の生産性をたたき出し、商品もアルコールドリンクや白イチゴをベースにした化粧水などに広げ、タイやインドでも展開。革新者の中でもスピード感では突出している。

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