社内失業から立ち直った日立研究者の本音 変化はあらゆる人に等しく降りかかる

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日立製作所の矢野和男・中央研究グループ技師長(撮影:今井 康一)

人間行動に関する科学的な新事実を次々と発見

加速度センサーで人間の「ハピネス(幸福感)」が計れる――。

興味深い研究内容を発表し、世界中から注目を集めているのが日立製作所・中央研究グループ技師長の矢野和男氏だ。2006年にリストバンド型のウエアラブル端末を開発し、人間の動きを延べ100万日以上にわたって計測してきた。

矢野氏は「ビッグデータ」という言葉もない頃から研究に着手し、それらを自動で分析する「AI(人工知能)」も開発。センサーが発するデータを分析することで、人間行動に関する科学的な新事実を次々と発見した。2014年に研究成果を自らつづった著書『データの見えざる手』が出版されると、大きな反響を呼んだ。

たとえばコールセンターの事例では、電話オペレーターが名札型のウエアラブル端末を首からぶら下げて、コミュニケーションや各時刻の居場所、名札が揺れるパターンなどを計測した。同世代のチーム4人が同時に休憩時間を取るようにしたところ、会話が活発化したことで活動が10%向上し、業務においても受注率が13%も向上したことを明らかにしている。

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他の業態や米国の銀行でも同様の結果が得られた。これらを踏まえ、「集団の活発度が上がると社員のハピネスが高くなり、企業の業績・生産性も高まる」と分析している。

ハピネスのほかにも「運」「経済活動」「購買行動」などにおける科学的な法則も解説。ビッグデータを基に自ら学習するAIを開発したことで、あらゆる社会の問題を解決できるようになると提唱している。

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