EV移行で先行、中国に広がる「過剰生産」の大問題 余るガソリン車工場、供給過剰で値下げの嵐

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(写真: Gilles Sabrié/The New York Times)

中国西部最大の都市・重慶の郊外には、中国自動車工場の供給過剰を象徴する巨大なシンボルが存在する。灰色の建物の複合体で、広さは1平方マイル(約2.6平方キロメートル)近く。働いていた何千人もの従業員はすでに去り、深紅に塗られた搬入口は閉じられている。

需要減のガソリン車で年4000万台の生産能力

組立工場とエンジン工場だったこの複合施設は、中国企業と韓国の大手企業・現代自動車(ヒョンデ)の合弁で、ロボットなどの装置を備えたガソリン車工場として2017年に開設された。ヒョンデは工場建設や設備に11億ドルを費やしたが、昨年、それとは比較にならないわずかな金額で施設を売却。敷地の草は刈られることなく、膝の高さまで伸びていた。

「高度に自動化された工場だったが、今では見る影もない」と、競合する中国の自動車会社、長安汽車で働くジョウ・ジョーフイ(24)は言う。彼が住むアパートは、この工場を見下ろす位置にある。

中国に存在するエンジン車工場の数は100を超え、それらが持つ生産能力は年間で4000万台近く。中国国内需要のざっと2倍だ。しかも電気自動車(EV)の人気が高まる中、エンジン車の販売は急速に落ちている。

3月には中国の主要35都市で、EVとプラグインハイブリッド車の合計販売台数がガソリン車の販売台数を初めて上回った。ほとんど稼働していないか、休眠状態となっているガソリン車工場は何十と存在する。

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