致死率約1割!「新型インフルエンザ」の恐怖 日本人の感染症対策は遅れている

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──この本では物流企業を特記しています。

21世紀の感染症は国土交通省の管轄になるといわれるほどだ。人の盛んな交流によって短時間で広がりかねないからだ。もちろん厚生労働省にも頑張ってもらわないといけないが、医療問題だけでは済まないのが21世紀型なのだ。物流を確保することが大事だからだ。

H5N1型のワクチンは日本物流団体連合会が会長をはじめ率先して接種している。指定の物流業者には大流行時に健康体でワクチンや薬を運んでもらわなければならない。H5N1型は重症度が高く、物流業者には怠りなく準備してほしいものだ。どういう感染症が企業リスクになり、どのようなガイドラインを作るか、今あらためて検討しなければならない。企業における対策でも、最小の被害にしいち早く復興させるという原則の貫徹が大事だ。

人口が増えると感染症流行の危険性も増す

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──対策設定では物流と人の移動がポイントなのですね。

昨年大問題になったMERSがなぜ韓国に上陸したのか。発生源である途上国の問題では片付けられない。ウイルスは僻村から大都市に、その国際空港から全世界に瞬く間に広がる。エボラウイルス病ではWHO(世界保健機関)にしても、患者が昨年2ケタも多くなろうとは考えられなかった。21世紀型パンデミックは、思ってもみなかったような病気が、火薬庫といわれる所から、さらには未知の所からも今や来襲してくるのだ。

──人口増加も背景に。

歴史人口学で振り返れば、食糧増産で人口が増えて、人が浮かれ出す頃に感染症の流行が繰り返されてきた。今は75億人にまで増え生物多様性が減じる中で、ホモサピエンスが突出して増加しどうしても感染症は起きやすくなる。高速大量輸送、その一方で人口過密地での暮らしとなれば、同時多発となりやすい。

流行のカーブがなだらかならば医療は破綻しないが、そうはならない可能性もある。医療のキャパシティ破綻は致死率2%ぐらいから起こるといわれている。21世紀型のパンデミックを回避するためには、少なくともカーブをなだらかにする対策を取る。それでこそ社会は持ちこたえることができる。

日本人は熱しやすく冷めやすい。準備を怠ったときにパンデミックになるのがいちばん怖い。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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