本当に「業績のいい会社」は株主を見ていない 人を幸せにしない業績主義は王道に反する

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人を幸せにすることが経営学の王道のはず (写真:Rawpixel/PIXTA)

日本でいちばん大切にしたい会社5』は、2008年の1作目以降、累計67万部を突破した大ヒットシリーズの第5弾。著者である法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授は、今回掲載の6社を含む計32社の「人をトコトン大切にする会社」に光を当て、株主大事の企業の優先順位は根底から間違っている、と警鐘を鳴らしてきた。

経営の目的は業績を上げることじゃない

週刊東洋経済「ブックス&トレンド(著者インタビュー」の過去記事はこちら

──「5人に対する使命と責任」が一貫したキーワードですね。

企業には自社の社員とその家族、外注先・下請け企業の社員とその家族、次に顧客、地域社会、株主の順で幸せを追求する使命があります。満足度の高い自社・外注先の社員が生き生きと働いてこそ、顧客に感謝される製品やサービスを提供でき、収益を上げられる。5番目の株主の幸せはその結果ついてくる。経営の目的は業績を上げることじゃない。
 業績から考え出すと、人間は材料と同じコスト扱いで、安いほうがいいとなる。社員を減らしつつ仕事は増やし、さらに非正規に切り替え、価格競争の泥沼にはまる。それでは人を苦しめるだけですよ。じゃなきゃうつになる人間が100万人も出ない。業績主義は人を苦しめる。なのに経営の目的は依然として業績に置かれている。残念ながら今の大学がそう教えてる。そこで学んだ連中が社長になっていくから世の中永遠に変わらない。人を幸せにすることが経営学の王道のはずですよ。

──それはもともとお持ちだった信念なのですか。

いや、7300社フィールドワークして出た結果です。学生時代は私も社員や外注はコスト、大事なのは顧客と株主だと教わりましたから。ところが企業を調査して回っているとどうも様子が違う。業績に目くじら立ててない会社のほうがむしろ安定して好業績が出ている。最初それは例外じゃないかと疑いました。でも全国回っているとそんな会社がぽつんぽつんとあって、それが点から線、面へと広がって確信に至った。

すべて勘違いだったと現場から教わった。社員第一を実践してる会社の側も、それが正しいと気づいていませんでした。業界の集まりに行くと、そんなこと言ってたら潰れるぞと総スカン食うという。そこで、いや北海道にも沖縄にもあなたと同じ意見の会社があって、みな好業績を持続してますよと伝えた。そうですか、ではこれからもこの道をひた走ります、とお礼を言われましたよ。

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