経営技術では「イノベーション」は起こせない

「揺らぎ」の体験こそがひらめきを生む

イノベーションは突然生み出せるものではない(写真 :Graphs / PIXTA)
心(知的システム)を見ることはできないが、情報という共通言語で可視化できる。「ビジネスに生かせる知性」の姿の描き出し方に関する著作『教養としての認知科学』を書いた青山学院大学教育人間科学部の鈴木宏昭教授に、詳細を聞いた。

認知科学はイノベーションにかかわる

週刊東洋経済「ブックス&トレンド(著者インタビュー」の過去記事はこちら

──認知科学はイノベーションに大いにかかわるのですね。

イノベーションを起こせ。産業界で至上命令のごとく言われる。だがイノベーションは、創造やひらめきと同様に、突然生み出せるものではない。

ひらめきを伴う問題解決について研究を続けてきて、現実は「正解」と全然できない状態とをうねりながら行ったり来たりする、つまり試行錯誤があったうえだとわかった。ダメだったものが急にうまくいく、あるいはマネジャーや、それこそ社長を代えればうまくいくというのはまさに夢であって、現実は違う。この「揺らぎ」を体験している人はその間に進歩しているのを実感できない。揺らぎつつ進化するものなのだ。だから、現場の苦労まったくなしでマネジメント技術だけでイノベーションを起こそうとしてもできない。失敗や苦労、部分的な成功を共有し、積み重ねていくことをしないと絶対にひらめきは訪れない。

──突然訪れるわけではない?

パズルで例えたい。たとえば4つのピースを組み合わせてT字形にするパズルをやってもらうと、普通は正解に至るまで数十分かかる。正解に近づく置き方をする回数を時間ごとに数えてみると、初めはもちろん少ない。あるときぐっと正解に近づいたりして、またダメになる。そういうことを何度も繰り返す。人が何か新しいものを発見する背後には、思考の進化や発展があり、試行錯誤状態の揺らぎがつねにあることに本人は気づいていない。

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