道路や橋など社会資本の老朽化は大きな問題だ 災害に強い設備にするには更新費用も莫大に

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台風19号による長野県・千曲川の堤防決壊で出動した救助隊員(写真:ロイター/Kim Kyung-Hoon)

今回の台風19号では、各地で24時間の雨量が観測史上1位を更新するという記録的な大雨となり、同時にあちこちで河川の堤防が決壊して大規模な浸水被害をもたらした。近年大雨が増加しているが、気候変動の寄与が指摘されており、これまでの想定以上の雨に耐える治水対策を行うことが今後必要となっていくであろう。

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9月の台風15号でも千葉県内で大規模な停電が起こったが、想定以上の強い風が吹いたことも大きな原因であり、送電線の鉄塔や電柱の復旧工事では、元々の設備よりも強い風に耐えるものを建設することが必要になっている。こうした対策の費用は、単なる復旧よりもはるかに高いものになるはずだ。

そもそも、わが国の社会資本ストックは老朽化が進んでおり、今後、インフラ施設の維持や更新に関わる費用が大きくなることが懸念されている。

建設から50年以上の老朽設備が増えていく

例えば、東京の首都高速道路は1962年に京橋と芝浦の間の4.5kmが開通し、1964年の前回の東京オリンピックに向けて突貫工事で整備が進められた。完成からすでに半世紀以上が経過した路線も多く、首都高速道路株式会社は、「進行する構造物の高齢化や過酷な使用等により、重大な損傷も発見されている状況」にあるとして、大規模な更新・修繕事業を進めている(「首都高速道路の大規模更新・修繕事業~高速道路リニューアルプロジェクト」)。

2012年には中央高速道路の笹子トンネルで天井が崩落して9名もの死者を出す大事故が起こった。首都高速道路以外にも高度成長期に整備が進められたさまざまな社会資本は老朽化が進み、更新や大規模な改修工事が必要になっている。

国土交通省は一部の社会資本について今後の老朽化の速度を試算している(「社会資本の老朽化の現状と将来」)。

例えば全国の73万ある「道路橋」のうちで、2018年度末では25%が建設後50年以上が経過しており、2033年度末にはこの割合は63%に上昇する。

下水道は比較的整備が始まった時期が遅いため、建設後50年以上を経過した「下水道管きょ」は2018年度末時点では4%だが、2033年度末には21%に上昇する。今後急速に老朽化が進むことが予測されている。

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