世界的には、刑務所や監獄の再開発は、石造りなどの既存の建物をそのまま活用してリノベーションする手法が多い。例えば、香港の「大館(タイクン)」は、1841年以降にイギリス統治下で建設された「旧中央警察署」「中央裁判所」「旧ビクトリア(域多利)監獄」の3つの歴史的建造物群を再利用した複合文化施設である。
刑務所としての運営期間は、1841年〜2006年(165年間)で、閉鎖から開業まで約12年を要した。お洒落なショップやアートギャラリーが並ぶ一方で、一歩独房エリアに入ると当時の厳粛で過酷な空気をうかがい知れるようになっている。
アメリカの「ザ・リバティ・ホテル」は、1851年に建てられた「チャールズ・ストリート刑務所」をリノベーションしたものだ。1851年〜1990年(139年間)まで本物の監獄であったが、約17年ののちに、暗い歴史を隠すのではなく、「脱獄(リバティ=自由)」というふうにユーモアを交えた独自のブランディングを前面に押し出して営業している。
「奈良少年刑務所」の赤レンガ建築を活用したホテル「星のや奈良監獄」
日本だと、「奈良少年刑務所」として使われていた明治時代の赤レンガ建築(国の重要文化財:旧奈良監獄)を活用し、今年6月25日に開業した日本初の監獄ホテル「星のや奈良監獄」(星野リゾート)がそれに当たるだろう。
一方で巣鴨の場合は、敷地が約18.6ヘクタールとあまりにも広大だったこと、また当時は日本の高度経済成長期で「東京の副都心(池袋)に大規模な商業・ビジネス拠点を大至急作る必要があった」ことから、建物をすべて解体し、更地から全く新しい超高層複合都市を造り上げるという、世界でも類を見ないダイナミックな開発過程をたどった。
八王子の場合も、肝心の中身は異なるが、単なる商業施設よりも公園などの公的な性格を強く求める自治体と住民のニーズを背景に、「歩いて楽しい文化の香るまちにふさわしい新たな集いの拠点づくり」が不可欠であるとして、全面的に再開発される点においては一致している。ただし、遺構と展示で最低限の来歴を語ろうとする意欲があった。
もちろん、残し方には賛否があるだろう。誰もが納得できる歴史的遺構の保存や歴史観は絵空事だし、何よりも新しい場所は次世代が生きていくための場所でもある。それらのバランスを踏まえた上でも、「桑都の杜」は興味深いモデルケースとなっているといえる。



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