そこで中澤さんは、商品を並べたり、机を直したりなど、あえて準備をしている様子を見せることにした。客に背中を向けることで「油断」を誘い、世間話から始めて徐々に輪を広げていったという。
「昔からの『実演販売らしさ』はもちろん大事ですが、人によって個性は違うし、同じ台本が全員にハマるとは限りません。私の場合、あえて個性を出したほうがうまくハマった感じです。その代わり、異端だと言われることも多かったですね。ポン太だって、実演の伝統を重んじる方からすると『大事な手になにをするんだ』という見え方になりますから」
オリジナルの「自分」は誰にも奪われない
歌手時代に我慢を重ねてきた経験から、実演販売士の仕事は「自分がやりたいと思ったことを自由に試せることが嬉しい」という。自身のキャリアも、実演販売のスキルも、中澤さんはトライアンドエラーを繰り返しながら道を切り拓いてきた。
「AIに仕事を奪われるかもしれない」と不安を抱く人に声をかけるとしたら?と聞いてみると、中澤さんは少し考えたあと、「自分の心の動きだけは忘れないでほしいです」と答えた。
「AIに『なんかモヤモヤする』と聞けば、それっぽい答えは出てくるでしょう。でも、自分の心を言語化できるのは、自分しかいません。何に対してどう感じたのか、この感情は過去に感じた何に似ているのか、面倒がらずに深掘りしていけば、自分への解像度が高まります。たった1人のオリジナルの存在である『自分』は、誰にも奪われようがないはずです」
最後に、中澤さんの今後の目標について聞いた。
「目標はあまり決めないようにしているんです。どうも自分の人生は、目の前のことを頑張り続けると、次のステージが勝手に現れるみたいで……。とにかく今は、後悔のないように自分の能力をすべて出し切ることしか考えていないですね」
となると、次はどんなステージが出てくるんでしょう。なにか新しいことに挑戦してみたり?
「そうですね……。ずっと商品を主役にしてきたので、自分発信で人の役に立てるものを生み出してみたいですね。たとえば、実演販売士の漫画を自分で描いちゃうとか。あとカードゲームもいいですね。企業セミナーで実演を学べるものができたら面白いかも。誰か一緒にやりませんか(笑)」
誰かの心を動かすことで、自分の人生を動かしてきた中澤さんは、「新しい目標が今できました」と笑うのだった。


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