ゲルは、材料や構造にも工夫があります。
基本となるのは木の骨組みで、その外側を羊毛のフェルトや布で覆います。壁の骨組みは格子状になっていて、折りたたむことができます。
解体すれば部材をまとめて運べるので、移動する暮らしに適しているのです。
なかでも面白いのが、フェルトです。
羊の毛は、衣服の材料になるだけではありません。ゲルを覆い、室内の暖かさを保つためにも使われます。寒い季節には覆いを厚くして、寒さに備えることもできます。家に重ね着をさせるようなイメージですね。
草を食べて育った羊の毛が、今度は人間の住まいを守る。家畜を飼うという営みが、食べ物と住まいの両方につながっているわけです。
ここで、地理で習う別の住居と比べてみましょう。乾燥した地域には、日干しれんがで造られた家もあります。土を成形し、日光で乾かしたれんがを積んだ、定住生活を支える住まいです。
同じ乾燥した土地でも、移動する暮らしでは「解体して運べること」が重要になります。定住する暮らしでは、別の条件を優先できます。
家の材料や形は、気候だけで決まるわけではありません。そこで暮らす人が、どのような生活を営んでいるのか。その視点を加えると、違いを理解しやすくなります。
丸い家には、暮らしを支える知恵が詰まっている
ゲルの屋根の中心には、「トーノ」と呼ばれる円形の開口部があります。光を取り込み、換気をするためのものです。
さらに、ここから差し込む日光の位置は、おおよその時刻を知る手がかりにもなってきました。家の構造が、時間を知る仕組みにもなっているのです。
私たちは普段、家の中の設備を別々のものとして考えがちです。明かり、換気、暖房、時計。それぞれに専用の道具があります。
ところが、ゲルを見ると、限られた材料と構造の中に、暮らしに必要な工夫が組み込まれていることがわかります。
解体できること。運べること。組み立て直せること。そして、厳しい自然の中で暮らせること。
「簡単な造りの家」と眺めていたものが、暮らしに合わせて受け継がれてきた知恵の集まりに見えてくるのではないでしょうか。


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