そんな巧みな脚本を、腕も味もある俳優陣がそれぞれの表現を通して見事にバトンをつないでいる。筋書きも芝居も演出も、すべてがしっかりと時間も手間もかけて作りこまれた作品であることが伝わってくる。
それを牽引するのが主演の役所だ。スターの傲慢も、世間から忘れ去られた焦りと哀愁も、人生を生き直す真摯な姿も、それらすべてに滑稽さとカッコ良さが混在し、内包する悲哀をにじませる。その絶妙なバランスの芝居には、役所本人の人柄がにじみ出ている。
磯村勇斗と河合優実のすごみ
個性的な登場人物のなかでも、あまりのインパクトにしばらく余韻から抜け出せなかったキャラクターが、磯村勇斗演じる、自称「無頼タケルノミコト」こと村井タケル。劇団「ウィスキーボンボン」の看板俳優だ。一方、物語のなかで感傷を呼び起こす装置になっていたのが、河合優実演じる野々村エマ(コンカフェでの名前はエルザ)だ。
磯村勇斗といえば『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の相良役、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のジルベール役と、その時々のハマり役から視聴者に印象を残し、活躍の場を広げてきた。
そんな彼にとって本作のタケルノミコトは、これまで以上のインパクトを放ちながら、まさに自身の色に染め上げた当たり役になるだろう。本作を通して俳優としての輝きがいちだんと増している。
河合優実は、ブレイクのきっかけになった『不適切にもほどがある!』(TBS系)では、阿部サダヲとの父娘のケンカ腰の激しい掛け合いが注目を集めたが、本作ではそれとは対照的な切なさがにじむ役所との父娘役を演じる。
しかし、キャラクターの本質には共通点がある。多くの役を演じてきている河合だが、不適切〜と本作での2役は彼女の芝居のうまさと素の人間性をかけ合わせながら、彼女自身をもっとも引き出しているように感じる。それもクドカンのセンスなのかもしれない。
本作で描かれる父と娘の関係性の修復には、親が子を思う心情の真理があり、強く心を打たれる。売れっ子の河合だが、クセのある変わり者役を演じたときにより光る資質がある。本作の彼女のシーンには、必ず温かい笑いと涙と感動があった。


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