いったん「あの人は苦手だ」「裏で何か言われているかもしれない」などというマイナスの感情が生まれると、「目を逸らされた(気がする)」「反応が薄かった(気がする)」など、相手の何気ない動作の1つひとつが、すべて「妄想を裏付ける根拠」に見えてきてしまうのです。
この妄想を発生させない、あるいは発生した瞬間に吹き飛ばすための最もシンプルで強力な武器、それが「あいさつ」です。
「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。しかし、あいさつには単なるマナーや礼儀以上のパワーがあります。相手が敵かどうかを確かめ、自分の安全を確立するための、きわめて戦略的な「先制攻撃」なのです。
軍の対空戦闘では、近づいてくる航空機をまず「不明機」として扱います。味方なのか、敵なのか。この識別がつくまで、警戒を解くことはできません。最も危険なのは、正体がわからないまま接近を許してしまうことです。これは、人間関係においてもまったく同じです。
「あまり話したことがない人」
「なんとなく無表情な人」
「少し気難しそうな人」
その人は、自分にとって敵か味方かわからない「不明機」です。人は、正体がわからない存在に対して本能的に警戒モードに入ります。しかし、警戒状態が長く続くと、脳は疲れてしまいます。そこでエネルギー節約のために「たぶん敵だろう」というラベルを貼って結論を出すのです。
「あの人はいつも不機嫌そうだ。きっと私のことが嫌いなんだろう」
「話しかけづらい雰囲気だな。私を拒絶しているに違いない」
こうして、実際には何もされていないのに自分の中で勝手に「敵」をつくり上げ、「嫌われているに違いない」と決めつける。すると、視界がさらに曇り、問題のないところにまで問題を見つけてしまいます。いわば、自分で霧を濃くしてしまうのです。これが、人間関係で悩みやすい人の共通点です。
「正体不明の人」を無害な存在に変える最強の方法
この「不明機」を一瞬で「無害な存在」に変える方法が、あいさつです。
航空機や艦船には「IFF(敵味方識別装置)」というしくみがあります。互いに信号を送り合い、相手が敵か味方かを確認する装置です。あいさつは、まさにこのIFF信号といっていいでしょう。


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