自分の注文内容が少し手間のかかるものではないかと思い、いつも申し訳なさいっぱいの声でバリスタに伝えていた。しかし、いざ自分がバリスタとして働いてみると、私のオーダーの手間などまだまだかわいいほうだった。
あるお客様はホットのアメリカーノを注文した。アメリカーノはオーダーの対応もドリンクの用意も一番シンプルなコーヒーだ。たいていの場合は。
ところが、このお客様のオーダー事項はまるでマシンガンのように続くのだ。
「グランデサイズのアメリカーノで、カップだけベンティサイズにしてください。コーヒーはデカフェと通常のものを半々で。シュガーフリーのバニラシロップを2プッシュ、モカシロップを2プッシュ入れて、上にチョコスイートバニラのフォームをお願いします。フォームの上にはキャラメルソースとチョコレートパウダーのトッピングつきで」
一体、今私は何を聞いたのだろうかと頭が真っ白になる。
このようにスターバックスを訪れるお客様たちのオーダー内容は、驚くほどクリエイティブだ。だが、不思議なことにバリスタたちは、こういったややこしいオーダーも決して嫌がらない。
オーダーの対応を楽しんでいるバリスタたち
もちろんラッシュアワーのように注文が波のように押し寄せていて忙しさを極める場合は例外だろうけれど、スターバックスのバリスタたちはこのような複雑なオーダーの対応に挑むことを楽しんでいる。「なるほど、これにこれを合わせて飲むのか!」と味を想像してみたりもする。
毎日同じドリンクを繰り返し作っているように見えるかもしれないが、スターバックスのバリスタとして働きながら、動画資料と実習を通じて1年中研修を受けつづけている。メニューとサービスが幾度となくアップデートされるからだ。
実際に経験してみて、スターバックスのサービスにおける最大の強みである標準化の過程にはただただ驚くばかりだ。
細部までよく考え抜かれた研修内容を目にしながら、世界中にある3万を超える店舗で数十万人ものバリスタたちが働くスターバックスでは、このような体系的で標準化された教育が欠かせないのだろうと実感した。
現場で試行錯誤しながら仕事を覚え、従業員それぞれの個性を大切にするトレーダー・ジョーズと、世界中どこでも同じサービスを提供できるように厳格な事前教育を施すスターバックス。
従業員を育てる方法がまったく異なる2つの企業で、身をもってその違いを体験するというのもなかなか価値のある経験だった。



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