感染症を念頭に、組織標本をより慎重に観察していくと……ようやく「証拠」を見つけました。脳、心臓、肺、肝臓、脾臓など、各臓器の血管内皮細胞(血管の内壁をつくる細胞)の中に、小さな点々がありました。非常に小さく、注意深く観察しなければ見逃しかねない「点々」です。
突然死したペンギン、臓器の出血、組織の壊死、血管内皮細胞の中に見える点々……思い当たる病気がありました。鳥マラリアです。
ペンギンもマラリアにかかる
マラリアと聞くと、多くの人は人間の病気を思い浮かべるのではないでしょうか。実は、鳥類にもマラリアがあります。「鳥マラリア原虫」という、単細胞の寄生生物(原虫)によって起こる病気で、蚊によって媒介されます(この蚊に人間が刺されても鳥マラリアに感染することはありません)。
鳥マラリア原虫は、宿主の赤血球や血管内皮細胞などに寄生して増殖します。感染した鳥は、貧血や臓器障害などを起こし、重症化すると死亡することもあります。
鳥マラリア原虫には複数の種が存在していて、その種類や宿主となる鳥の違いによって病原性や症状の出方が異なりますが、詳しいことはまだよくわかっていません。
ペンギンは鳥マラリアに対する感受性が高いとされ、急死や集団での連続死などがしばしば報告されます。一方で、感染しても症状がまったく出ない個体もいて、どのような条件で重症化するのかは、よくわかっていません。
顕微鏡で見つけた「点々」は、その大きさや形状、組織の病変などから、鳥マラリア原虫ではないかと推測できました。原虫が血管内皮細胞に寄生して増殖したことで血管壁が傷つき、肝臓や脳に出血が起きた。組織の壊死も、こうした血管の病変によって引き起こされたと考えられました。
ただ、小さな原虫は顕微鏡で見ただけでは種類まで断定できません。そのため、「鳥マラリアだと思うので、PCR検査をお願いします」と水族館に伝え、検査を行ってもらったところ、推測どおり鳥マラリア原虫であることが確認されました。


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