これらのうちのどれかや複数の経路で、認知症のリスクは高まることになります。
帯状疱疹とインフルエンザが脳にダメージを与える
ウイルスごとに少し詳しく見てみましょう。特に要注意なのが帯状疱疹です。
子どもの頃に水ぼうそうとして感染した方は多いと思います。この水ぼうそうのウイルスは体内から完全に消えるわけではありません。神経細胞が集まる「神経節」という場所にひっそりと潜伏し続けます。そして、高齢になったり、ストレスや疲労で免疫が落ちたりすると、「再活性化」して、痛みを伴う発疹を起こします。これが帯状疱疹です。
この再活性化がポイントです。再活性化するたびに、脳のどこかで小さな炎症が起きていると考えられています。特に帯状疱疹が起きた体の場所が大切だと言われています。
つまり脳に近い眼における炎症、もしくは脳自体に直接、ウイルスによる炎症が起きた場合(脳炎と言います)には、認知症を発症する危険性が高まると言われています。
インフルエンザは、帯状疱疹の原因となるウイルスとは異なり、体内に潜伏し続けるタイプではありません。感染しても、多くの場合は免疫によって排除され、体内からいなくなります。ただ、毎年のように何度もかかる方もいます。そうすると、その回数だけ、わずかずつでも脳にダメージが残っていく可能性があります。
2024年に発表された研究は、ウイルスの種類によって、萎縮しやすい脳の部位やその広がり方まで明らかになりました。具体的には、インフルエンザでは側頭葉や後頭葉のうち、神経細胞が多く集まる部分(灰白質)に、ヘルペスウイルスでは側頭葉の神経線維が集まる部分(白質)に、それぞれ萎縮がみられやすい傾向が示されました。
これは、ウイルスの種類によって、影響を受けやすい脳の部位が異なることを示しています。感染症が認知症の引き金になることがわかったのは最近で「でも、ヘルペスウイルスは、多くの人がすでに感染している身近なウイルスですよね?」と思われるかもしれません。その通りです。水ぼうそうの原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスは、多くの人が感染を経験する身近なウイルスです。
これらは、感染後も体内の神経節などに潜伏し、その後再活性化することがあります。 これらのウイルスは、感染後も神経節に潜伏するため、体内から完全に取り除くことはできません。それでも、最近の培養した神経細胞を使った実験から、興味深い結果が報告されました。神経細胞に帯状疱疹の原因となるウイルスだけを感染させても、アミロイドベータやタウには、目立った異常がほとんど生じなかったのです。


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