ただ、念願の高校に入っても、すべてがうまくいったわけではない。
相佐さんが肌で感じたのは、一般入試で国公立大学を目指すことが強く期待される空気だった。模試の志望校欄には、東京大学と書くよう促された。勉強時間の目安は「平日4時間、土曜6時間、日曜・祝日8時間」。日々の学習にも、厳しさがあったという。数学と理科では赤点を取ることもあり、高1の秋には、勉強への気持ちが一度折れてしまった。
英語のスピーチコンテストに夢中になる
それでも、夢中になれるものがあった。英語のスピーチコンテストだ。
学校では、受験に直接関係のないコンテストへの参加を「お遊び」と言われたこともあった。それでも相佐さんは、挑戦を続けた。
大会には、帰国子女やインターナショナルスクール出身の生徒も集まる。英語を流暢に話せるだけでは、抜きん出られない。そこで彼が考えたのは、自分にしか語れないことは何か、という問いだった。
日本では登園を嫌がっていたこと。アメリカで、言葉も文化も違う環境に飛び込んだこと。ギフテッドクラスで友達の作品を紹介したこと。帰国後、日本の教室に戸惑い、中学受験では不合格になったこと。
自分が経験し、考えてきたことなら、自分の言葉で話せる。
環境問題や世界平和といった大きなテーマを語る生徒もいる中で、相佐さんは、自分の体験から生まれた問題意識を伝えようとした。
数百人の観客がいる大きなホールで、審査員の目を見ながら話す。どうすれば届くのか。どの言葉を選び、どこで間を置くのか。かつて友達の作品を紹介していた少年は、今度は自分の経験を伝えるために、舞台に立っていた。
高校2年のKIU杯高校生英語スピーチコンテスト全国大会では、審査員全員の支持を得て優勝した。
その高校2年の夏、早稲田大学のオープンキャンパスで知ったのが、全国自己推薦入試だった。自分の経験や活動、これから学びたいことを伝えて、大学を目指せる道がある。相佐さんはパンフレットを100回以上読み返し、大学がどんな学生を求めているのかを考えた。
アメリカで経験した葛藤。日本に帰って感じた教育への疑問。人前で話し、誰かに伝えることを通じて学んできたこと。それらを整理し、志望理由書と面接で、自分が大学で学びたいことにつなげていった。そして、早稲田大学社会科学部に合格した。


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