選択肢の設計も違う。七宝はトッピング50種類以上、辛さは0〜10辛まで選べるなど、選択肢の幅広さ、多様なカスタマイズで勝負している。一方の菜菜は、スープ3種類、辛さは0〜3辛を基本とし(4辛以上は追加料金)、選択肢をコンパクトにまとめている。初めての客でも迷いにくい設計だ。
注文の仕組みそのものは、どちらもよく練られている。大雨の日に訪れた七宝も、客の入りはそこそこあったが、具材選びから計量、会計まで流れはスムーズで、迷うところはなかった。
決定的に違ったのは、肉の扱いだ。七宝では、肉は客が自分で取る具材ではない。豚肉や牛肉、羊肉などは1品150円の追加トッピングとして注文する方式だ。キャンベラで肉を山盛りに取っていた筆者には、これが一番の驚きだった。一方の菜菜は、鶏もも肉・豚肉・牛肉・羊肉を他の具材と同じショーケースに並べ、肉ごとに専用トングを用意して、客が自分の好きな量だけグラム単位で取れるようにしている。野菜だけでなく肉もたっぷり食べたい、自分で量を決めたいという人には、菜菜の仕組みのほうが合うだろう。
そして立地である。七宝は駅前の路面店や駅ビルを中心に出店し、岸和田のショッピングモールなど郊外の商業施設にも店を構える。対して菜菜は、開業予定を含む9店すべてが商業施設内のフードコートやフードホールだ。SNSには、フードコートに麻辣湯ができたことを喜ぶ利用者の投稿も見られる。先の女性も、七宝にはよく通う一方で、菜菜にはまだ行ったことがないという。七宝の利用者にとっても、菜菜はまだ出会う機会の少ない存在なのだろう。モールのフードコートを主戦場に据えれば、家族連れや、ひとりでは利用しづらい中高年男性など、これまで麻辣湯に縁の薄かった層との接点を増やせる可能性がある。得意な領域で、ターゲット層に最適化しているのだ。
牙城を崩すより、城の外に城を築く
菜菜麻辣湯の出店ペースは加速している。2025年10月末に横浜で1号店を開業。2026年2月の2号店開業後は出店を本格化させ、横浜ワールドポーターズ、ららぽーと愛知東郷、イオンモール京都桂川、名古屋茶屋、イオンモール堺鉄砲町、ららぽーと沼津と、9月には国内8店舗に達した。10月19日には千葉県初進出となるイクスピアリ店が開業し、約1年で9店舗体制を築くことになる。
注目したいのは、この9店舗目を、これまでとは別のグループ会社であるクリエイト・ダイニングが運営することだ。同じフードコートには9月、グループの「つけめんTETSU」も開業している。グループ各社が持つ出店拠点にも、菜菜を載せられる体制が見えてくる。
出店先は、駅直結のフードホールから郊外のショッピングモール、レジャー施設に隣接した商業施設まで幅広い。共通するのは、ほかの目的で訪れた人も自然に麻辣湯と出会える場所だということだ。ららぽーと沼津には、同じグループのしゃぶ菜も入っている。グループとして商業施設との関係を築いてきたことは、出店先を探すうえで強みになるはずだ。駅前で七宝と正面から客を奪い合うだけでなく、買い物やレジャーのついでに麻辣湯を試す人を増やしていく。筆者の目には、七宝の牙城を崩すというより、その外側に新しい城を築こうとしているように見える。
七宝とは違う魅力を持つ麻辣湯チェーンが現れたことで、この料理の懐の深さを改めて感じた。麻辣湯ブームの本番は、むしろこれからなのかもしれない。


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