一筋縄でいかない、独創性のある映画が作られること自体は、すばらしいのだ。問題は、それに応じた予算でやらなかったこと。アートハウス系、インディーズ系のような映画を、メジャースタジオ大作の予算で作ったから、目立ってしまったのである。
ハリウッドでは、低予算の映画が大ヒットすると賞賛を浴びるが、大型予算をかけた映画が大コケすると大恥をかく。リスクが大きいという理由で5500万ドルの製作費しかもらえなかった「ジョーカー」(2019)は10億ドル超を売り上げて前者となり、2億ドル弱の予算をもらって2億ドル強しか稼げなかった続編「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」(2024)は後者となった。
渾身の演技で、念願のオスカー受賞なるか?
「DIGGER」が大作並みの予算をもらえたのは、世界のトップスターであるクルーズと、オスカーの常連・イニャリトゥ監督が組んだからだ。ほかのコンビが売り込んできたら、今日のメジャースタジオは、まずこの企画を通さない。スターパワーのまぶしさには、ハリウッドのベテランも目がくらむことがある。
業界内には、「DIGGER」を擁護する人々もいる。ギレルモ・デル・トロ、アルフォンソ・キュアロン、アン・ハサウェイなどだ。だが、デル・トロとキュアロンはイニャリトゥと同じメキシコ出身のオスカー監督。3人は親友で、製作中からお互いに映画を見せては意見を聞き合う仲だ。アン・ハサウェイは、「デイズ・オブ・サンダー2」でクルーズと共演することが発表されており、あまり説得力があるとは言えない。
しかし、クルーズのオスカーへの道は閉ざされていない。アカデミー会員は業界の内部を描く作品に共感しやすい(今作は、映画製作ではなく舞台のリハーサルを描くものだが)。また、10分間に及ぶせりふを迫力たっぷりに語るシーンはたしかに感心させる。
「映画館で観客を楽しませる」ことを使命としてきたクルーズだが、この映画には念願のオスカー受賞の狙いもあった。今のところ、主演男優部門ではジョン・マルコヴィッチ(『ワイルド・ホース・ナイン』)、アンドリュー・スコット(『Elsinore』)、マット・デイモン(『オデュッセイア』)らの後を追う形だ。
渾身の演技は、アカデミー会員の心をつかめるか。今後は、そこが焦点となりそうである。


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