買い物アプリを運営するカウシェ(東京・渋谷)が事業モデルの転換を経て業績を伸ばしている。現在はゲームの要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」を活用し、食品を中心に日用品や化粧品なども販売する。7月、世界各地で予選が行われる「スタートアップワールドカップ2026」の東京予選で優勝。11月には東京予選代表として、米サンフランシスコで開かれる世界決勝戦に挑む。
看板事業の「カウシェファーム」では、アプリで野菜を育てて収穫すると、実物の野菜を無料で注文できる(一部地域は送料別)。ゲームで利用者を集め、アプリ内の買い物につなげる仕組みだ。2026年5月の売上総利益(粗利)は約5.2億円。年換算で62億円になる。これを正社員とインターンを合わせた39人で割ると、1人当たり約1.6億円。カウシェによれば、上場企業と比べてもトップ10に入る水準という。
だが、同社は3年前、創業時の主力事業「シェア買い」の停止に伴い、売上総利益が9割減少した。シェア買いは、複数人で買うと割安になる仕組みで、中国の拼多多(ピンドゥオドゥオ)に着想を得た。東洋経済も21年の「すごいベンチャー100」で取り上げたが、23年9月、門奈剣平CEOは祖業の停止を発表。新規事業が育つまで旧事業と「並走」せず、先に稼ぎを手放す背水の陣だった。
26年3月にはDeNA(ディー・エヌ・エー)と資本業務提携した。独立経営のまま人材や知見を取り込み、次の成長を目指す。退路を断つ事業転換(ピボット)と組織変革の舞台裏、今後の成長戦略を門奈CEOに聞いた。ピボット時の資金繰りとコスト削減については、山田悠太郎COO(最高執行責任者)にも話を聞いた。
必死に成立させていた「楽しい買い物体験」
――シェア買いは高い評価を得ていました。どこから雲行きが怪しくなったのですか。
門奈 お客様は家族や親戚とは誘い合うが、それ以外の人を誘うとなると、買い物の楽しさを「気まずさ」が上回ってしまう。誘われた側は「割引のために声をかけたのかな、使われているのかな」と感じるかもしれないし、誘う側も関係を壊したらどうしようと考えてしまう。買い物の楽しさより、人間関係のコストのほうが気になってしまう。
利用者の継続率や招待率、獲得コストの面でも無理が出ていた。「楽しい買い物体験」のはずなのに、(運営側が)ここまで必死にならないと事業として成り立たないのか、と疑問を感じた。
当時は「一部のお客様や施策を除けば、獲得費用は回収できている」と言っていた。だが、「この部分を除けば成り立つ」と言っている時点で危ない。仲間には「ブラッシュアップすれば可能性がある」と旗を振りながら、数字への違和感は押し殺していた。
――ピボットを考え始めたのはいつごろですか。
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