喜劇俳優の伊東四朗が、90歳を迎える2027年6月15日をもって芸能界を引退すると発表した。伊東は「眼、耳、脳、腰、膝」などの衰えを理由に挙げ、ドラマ撮影でスタッフや共演者に迷惑をかけることが増えてきたと説明している。大きな病気で仕事ができなくなったわけではなく、現在もラジオのレギュラー番組を持っている。それでも「90歳で区切りがいい」と、自ら終点を決めた。
引退発表への反響を受けて、10月3日には会見が行われ、伊東は取材スタッフの多さに驚きつつ、「(引退を)撤回しようかな」などと語って笑いを誘っていた。
芸人には明確な引退のタイミングが存在しない
芸人の世界では、ここまではっきりと引退を宣言するのは珍しい。スポーツ選手なら身体能力が一定水準を下回れば引退が現実的な問題になるし、会社員ならば定年がある。
しかし、芸人には明確な引退のタイミングが存在しない。しゃべることができて、客を笑わせることができて、出演依頼が来るのであれば、70代でも80代でも仕事を続けられる。むしろ年齢を重ねたこと自体がキャラクターとなり、若い頃とは違う笑いにつながることもある。
そのため、芸人は自ら看板を下ろして引退するよりも、病気や体力低下によって仕事ができなくなるか、出演依頼が減って表舞台から遠ざかることのほうが多かった。人気商売である以上、人気がなくなれば仕事もなくなっていく。そこでは本人が引退時期を決めるという発想そのものがなかった。
たとえば、「笑点」の司会としても知られた落語家の桂歌丸は、2016年に体力の限界を理由にして同番組を卒業したが、落語家そのものを引退したわけではなかった。その後も入退院を繰り返しながら高座に上がり続け、2018年4月の国立演芸場が最後の高座となり、その約2カ月半後に81歳で亡くなった。晩年には酸素吸入のチューブをつけながら高座に立つこともあった。テレビ番組からは退いても、最後の最後まで現役の落語家であり続けた。


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