有料会員登録
ビジネス

"子どもの声がうるさい"時代に、なぜ保育園にパン屋を併設し街にひらくのか…元博報堂・資金ゼロで1Kから始めた男の答え

17分で読める
ベーカリーカフェ「まちのパーラー」
ガラス張りの「まちのパーラー」。隣接する「まちの保育園 小竹向原」の保育室とは、ガラス越しに互いの気配が伝わる(写真:筆者撮影)
2/9 PAGES
3/9 PAGES
4/9 PAGES
5/9 PAGES
6/9 PAGES
7/9 PAGES

「家庭も地域とつながれたり、地域に友達ができたりすると、孤立から逃れられると思うんです。でも人との心地よい距離感は一人ひとり違いますよね。だから、べったりとしたコミュニティにするということではなく、とにかくひとりにはしないという考えです」

あえて地域に開き、街との境界をデザインする

こうした地域とのつながりを、園という空間でどう形にするか。そのヒントになったのが、生物学の「エコトーン(移行帯)」という考え方だ。異なる環境が接する境界に、多様な生物が集まることを指す。

「地域に開くといっても、全部を丸見えにすればいいわけではありません。子どもたちの生活はちゃんと守りながら、異なるものの境界をなだらかにしていくと、そこに多様性が生まれます。保育園と地域の間に、いろいろな人が行き交えるような中間領域をつくりたいと思っていました」

小竹向原園では、この「中間領域」が設計にも取り入れられている。保育園と、併設されたベーカリーカフェ「まちのパーラー」はともに、道路から約1メートル低い位置につくられている。ガラス越しにお互いの気配を感じられる一方、道路から子どもたちの生活が丸見えになることはない。

ガラス張りで開放的な外観の「まちのパーラー」(写真:ナチュラルスマイルジャパン株式会社)
小竹向原園に併設されたベーカリーカフェ「まちのパーラー」。左手のガラスの向こう側に保育室があるものの、お互いに姿が見えすぎないつくりになっている(写真:ナチュラルスマイルジャパン株式会社)

「まちのパーラー」は、松本さんがこの界隈に住んでいたころから通っていた「パーラー江古田」のオーナーに声をかけたところ、快く応じてくれたという。

「餅は餅屋だと思っていて。僕らがパン屋をやるのではなく、それぞれが自立した存在として一緒にやる。そのほうがお互いの文化が広がっていきますから」

カフェにはパンを買ったり食事をしたりする地域の人たちが日常的に訪れ、そのすぐそばで子どもたちが園生活を送っている。毎週金曜日には「まちのパーラー」のパンが給食に並び、子どもたちは0歳のころからその味に親しんでいるという。

「まちのパーラー」には、小麦の香りがふわっと広がるハード系のパンや食パン、ブリオッシュなどが並ぶ(写真:ナチュラルスマイルジャパン株式会社)

こうした地域との関わり方は、園によってさまざまだ。例えば、六本木園の軒先には「まちの本とサンドイッチ」という店がある。「本は人を深くつなぎ、食は人を広くつなぐ」をコンセプトに、サンドイッチや焼き菓子、スープなどを味わえるカフェのような空間だ。地域の人たちも気軽に立ち寄ることができ、卒園した小学生が宿題をしに来ることも。

六本木園の軒先にある「まちの本とサンドイッチ」。手作りのサンドイッチとスープ、焼き菓子、コーヒーなどを味わえる(写真:ナチュラルスマイルジャパン株式会社)

「同じものをコピーしていくという考え方ではありません。それぞれの地域に、その地域の文化や風景がありますから。そこに合ったあり方を考えていきます」と松本さん。実際、建物も園ごとに大きく異なる。

小竹向原園はガラス張りで、代々木上原園は周囲のお屋敷街になじむ外観だ。吉祥寺園はレンガ調で、六本木園はビルのなかにある。

代々木公園内に位置する園舎。子どもたちは代々木公園を第二の園庭として日常的に活動している(写真:ナチュラルスマイルジャパン株式会社)
8/9 PAGES
9/9 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数