「家庭も地域とつながれたり、地域に友達ができたりすると、孤立から逃れられると思うんです。でも人との心地よい距離感は一人ひとり違いますよね。だから、べったりとしたコミュニティにするということではなく、とにかくひとりにはしないという考えです」
あえて地域に開き、街との境界をデザインする
こうした地域とのつながりを、園という空間でどう形にするか。そのヒントになったのが、生物学の「エコトーン(移行帯)」という考え方だ。異なる環境が接する境界に、多様な生物が集まることを指す。
「地域に開くといっても、全部を丸見えにすればいいわけではありません。子どもたちの生活はちゃんと守りながら、異なるものの境界をなだらかにしていくと、そこに多様性が生まれます。保育園と地域の間に、いろいろな人が行き交えるような中間領域をつくりたいと思っていました」
小竹向原園では、この「中間領域」が設計にも取り入れられている。保育園と、併設されたベーカリーカフェ「まちのパーラー」はともに、道路から約1メートル低い位置につくられている。ガラス越しにお互いの気配を感じられる一方、道路から子どもたちの生活が丸見えになることはない。
「まちのパーラー」は、松本さんがこの界隈に住んでいたころから通っていた「パーラー江古田」のオーナーに声をかけたところ、快く応じてくれたという。
「餅は餅屋だと思っていて。僕らがパン屋をやるのではなく、それぞれが自立した存在として一緒にやる。そのほうがお互いの文化が広がっていきますから」
カフェにはパンを買ったり食事をしたりする地域の人たちが日常的に訪れ、そのすぐそばで子どもたちが園生活を送っている。毎週金曜日には「まちのパーラー」のパンが給食に並び、子どもたちは0歳のころからその味に親しんでいるという。
こうした地域との関わり方は、園によってさまざまだ。例えば、六本木園の軒先には「まちの本とサンドイッチ」という店がある。「本は人を深くつなぎ、食は人を広くつなぐ」をコンセプトに、サンドイッチや焼き菓子、スープなどを味わえるカフェのような空間だ。地域の人たちも気軽に立ち寄ることができ、卒園した小学生が宿題をしに来ることも。
「同じものをコピーしていくという考え方ではありません。それぞれの地域に、その地域の文化や風景がありますから。そこに合ったあり方を考えていきます」と松本さん。実際、建物も園ごとに大きく異なる。
小竹向原園はガラス張りで、代々木上原園は周囲のお屋敷街になじむ外観だ。吉祥寺園はレンガ調で、六本木園はビルのなかにある。


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