「保育園は、基本的に補助金によって収入が決まります。そのなかで最も大きな経費が人件費で、東京では次に大きいのが土地や建物の賃借料です。例えば、幹線道路から少しなかに入るだけで賃料は下がる。そうすれば坪単価を抑えながら、より広い土地を確保できます。土地を見れば、ここならどれくらいの規模の園がつくれて、事業として成り立つかを計算できるようになりました」
2009年、保育園をつくることを決意した松本さんは、ベンチャーを退職した。しかし株式を現金化せず、報酬も辞退していたことから、手元の資金は再びほぼゼロになってしまう。
開園資金をつくるため、建築や教育関連のプロデュース、コンサルティングなど、できる仕事はなんでもした。その傍ら開園準備を進め、翌2010年にはナチュラルスマイルジャパンを設立。さらに生活費を切り詰めるため、家族で小竹向原の隣駅にある1Kのアパートへ引っ越した。
「うちの土地で検討してみませんか」
松本さんが最終的に目指していたのは、認可保育所だった。高い月謝を払える家庭だけではなく、多様な人に開かれた園にしたかったからだ。しかし当時、実績のない事業者が認可園を開くのは簡単なことではなかった。まず実績をつくるための入り口として見つけたのが、東京都独自の「認証保育所」だった。
「行政に聞いてみると『今まで経験がなくても設置を認めないことはない』という見解だったんです。それなら、どういう条件を満たせば可能性が高まるのか、因数分解していきました」
見えてきた条件は4つ。保育園や幼稚園の経営経験者がいること、経験のある保育者をそろえること、1年分の家賃と1カ月分の経費を手元資金として保有していること、そして用地を確保していることだった。
松本さんは信頼できる経営経験者に役員を依頼し、「園ができたら働くよ」と言ってくれる保育士とも契約。先述したように開設資金も用意し、最後に残ったのが土地だった。
そこで、思わぬ縁がつながる。生活費を抑えるために家族で引っ越した1Kのアパートがあったのは、練馬区の氷川台。後に保育園を立ち上げる、小竹向原の隣駅だ。その近くに、たまたま昔からの友人が住んでいたのだ。


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