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ライフ #だから、ひとり暮らし

「死は無である」と言い切る直木賞作家・阿刀田高(91歳)が我が子に問うこと—約60年連れ添った妻を見送り、ひとり暮らし

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直木賞作家・阿刀田高さん
直木賞作家・阿刀田高さん。91歳のひとり暮らしを訪ねた(撮影:谷川真紀子 )
  • 蜂谷 智子 ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰
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しかし今、毎日このキッチンに立つのは阿刀田さんだ。一日三食を欠かさず、何を食べるか考え、材料を確かめ、食べ終えれば食器を洗う。

「今は、動作が鈍くなったせいもありますが、一日中、朝から晩まで家事のことを考えているに近いところがありますね。何を食べようか、どう用意しようか。インスタントラーメンだって、それなりに準備しなければならない。食べたら食器も洗わなければなりません」(阿刀田さん 以下の発言すべて)

家事をする人にとっては日常のことではあるが、その集積される手間について、老年のひとり暮らしで初めて気づいたそうだ。「主婦というのは、一日中こういうことを考えていたんですね」と、阿刀田さんは感慨深げに言った。

収納たっぷり、作業スペースもゆったりとしたキッチン(撮影:谷川真紀子)

「ブロッコリーは、自分で見て選びたい」

三食を自分で用意するとなれば、食材の買い物も欠かせない。普段は家族などに頼むことが多いが、それでも、自分で買いに行きたいものがあるという。

「近くに息子が住んでいるので、買い物を頼めますが、やっぱり自分で行かないとダメだなと思うことはあります。たとえば息子なら、ブロッコリーは手前に置いてあるものをそのまま買う。私はちゃんと見て選びます。

それからチーズも、自分がいつも食べている好みのものがある。ただ『チーズ』と頼んだだけでは、何を買ってくるかわからない。マグロのぶつを食べてみようと思うときも、その日に自分で買いに行かなければならない。さほどのことではないけれど、自分で行かないとだめなものもあります」

一日三食、自分で用意する。「味の素をかければ、それでおいしくなったと思ってしまうところがある。戦争を体験したおかげで、ごく普通のものを毎日食べても、あまり気にならない性格です」(撮影:谷川真紀子)
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