「誰かに勝つことではなくて、自分のからだをつくっていくため、自分の記録を伸ばしていくんだよ、と、子どもたちにはいつも伝えています」
保育園の活動は、職員の理解がなければ続けられない。趣旨に共感してくれる先生が5歳児クラスを担当していた年に声をかけたのがはじまりで、今では毎年の恒例になった。
今年の夏休みは、卒園児や学童の小学生を対象に6回開催。毎回40人が集まり、延べ240人が参加した。基本の走り方を教えると、子どもたちはおもしろいほど上達していくという。
「自由って、すごく大事だと思うんですよね。だけど、枠がある中の自由というのも、生きていくうえで大事だと思うんです。
かけっこって、最小限の枠があるんですよね。たとえば、白線を踏まないとか、合図がないと走っちゃいけないとか、まっすぐ走る、隣のラインを超えないとか。
本当にシンプルなルールがあって、それだけをきちんと守っていればいいよと教えると、それだけ守れるようになる。4月にはじめた子どもたちが、12月には立派にフォームがつくれるのは、本当にすごい進化! それは、すべてに通じると思うんですよね」
子どもから大人まで参加できる「にこりんダッシュ」を開催
2024年には、葉山町の100周年を記念して、「にこりんダッシュ50m タイムトライアル」というイベントを開催した。
子どもから大人まで誰でも参加できる、50m走のシンプルなタイムトライアル。夫婦やきょうだい、親子で走り、最後にはみんなでリレーをする。
もともと、川本氏が中心となり、東日本大震災の復興を願って福島で始まり、毎年開催されている陸上イベント「ももりんダッシュ」に共感したことがきっかけだった。このイベントを葉山でもやりたい。そんな思いから、「にこにこ保育園」にちなんで「にこりんダッシュ」と名付けた。
「サッカーのようなチームスポーツは、面白いけどルールや役割があるので、できる人にしかできない。でも、さすがに50mはだいたいの人は走れるんですよね。それに、走ってるときの顔って、いいんですよね。この日のために、わたしは1年間を過ごしているというほど、楽しみになりました」
負けず嫌いだから、子どもにも負けたくない。
外遊び中心の保育だから、どこへ行っても子どもたちは走り出す。73歳で世界記録を出した今も、松尾さんはその後ろを追いかけて走っている。


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