人生のテーマは、何歳からでも続けられる
保育園をつくることも、親子の居場所をつくることも、走ることも、一見すると別々の活動のようにも見える。
改めて、松尾さんを動かしつづけるものは、何なのだろう。
「自分にとってのテーマを実現すること、じゃないでしょうか。何かを思っていて、悩んでいたり、誰かのせいにしても解決しないので、自分の手でどこまでやれるかやってみる、という発想が出てくるんです。そうすると、後悔しないし、そういうふうに生きていきたいと思っています」
そう考えるようになった背景には、母の背中を見つめて育った少女時代がある。
「親が戦争に行った時代ですから、『無念な人生を送ったよ』という母親の言葉が残っていて。父も同じだったと思います。そうじゃない自分がいて、健康なからだをいただいて、こういう仕事に就けていることに感謝しなきゃいけないと思っているので。ほかの人たちとも、その喜びを共有できたらいいなと思っています」
来年、75歳になると、マスターズの出場カテゴリーがあがり、75歳以上(W75)になる。さらに5年後は、80歳以上(W80)に。
今の目標は、それぞれのステージで日本新記録を出すこと。そして、100歳まで走り続けること。
「仕事も、走ることも、リタイアはしません。いろんな人間同士の関わりが、脳トレにもなりますからね。そうやって、ずっと現役でやっていきたいと思っています」
50歳で公務員を辞め、保育の道へ進んだ。
62歳で、再び走り始めた。
73歳で、思いがけなく、世界記録にたどり着いた。
けれど、松尾さんにとって、世界記録がゴールではない。自分で決めて、自分の手でやってみる。その先にある景色を、何歳になっても見にいく。そして、自分にできることを、生涯かけて続けていく。
それが、松尾さんにとっての「生きる」ということなのだ。


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