俳優・中島歩への好感度が、いま一段と高まっています。
きっかけとなったのが、話題を集めたTBS系ドラマ『Tシャツが乾くまで』です。中島が演じた園田樹生は、家族をめぐる喪失を抱えながら、主人公の瀬尾咲子(蒼井優)と恋が始まりそうで始まらない、むしろ女友達のような友情を育んでいく。知れば知るほど魅力を増していく人物です。中島の低音ボイスとわずかに甘い滑舌までクセになっていきます。中島にとって、まさに当たり役です。
このドラマは、「登場人物に共感できない」という声も少なからず聞かれた賛否両論の作品でもありました。とにかく、癖の強い人物だらけだったことも、その理由のひとつかもしれません。
樹生の妻・あずさ(夏帆)、咲子の夫・充(松山ケンイチ)、充が営む喫茶店で働く直人(高橋文哉)、咲子の上司(臼田あさ美)、古本屋の店主(リリー・フランキー)。もちろん、咲子も樹生も、誰もが一見すると“いい人”そうに見えます。
けれど、そんな“いい人”の仮面が、回を重ねるごとに剥がれていく。しかも、その変化が何食わぬ顔でしれっと差し込まれるから、不意を突かれて妙にザワつくのです。
細かな描写にリアリティを感じる
ドラマの中では、ちょっとあり得ない展開も多々起こります。2組の夫婦がコインランドリーで何度も交差するなど、設定にはいかにもフィクションらしい偶然もあります。ただ、離婚歴があったり、家族が突然いなくなったり、大切な人を失ったり。そんな経験をした人なら、物語そのものの作為性とは別に、日常の細かな描写にリアリティを感じるのではないでしょうか。
樹生は、バス事故で妻のあずさを亡くします。それでも生活は続き、些細なところにその人の不在が残る。たとえば、あずさ宛てに届いた宅配便を樹生が開けると、中には生前のあずさが樹生のために注文していた白いTシャツが入っている。そんな、実際にあり得るような生活のディテールを、このドラマは見逃さず拾っています。
そして、樹生という人物をいっそう好きにさせたのが、最終回で語られるエピソードでした。妻のあずさが樹生を好きになったきっかけを語る場面です。かつて会社の受付で働いていたあずさに対し、樹生は毎日きちんと顔を向けて「おはようございます」「お疲れ様です」と挨拶をしていた。けれど、それはあずさにだけではなく、隣の受付の女性にも、入り口の警備員にも同じように接していたといいます。


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