こうした歩みの中で、ここにきて『Tシャツが乾くまで』で一気に注目を集め、2027年公開の映画『旅する練習』では、長編映画で初めて単独主演を務めます。作品の中にすっと入り込み、気づけば目で追ってしまう。そんな中島歩が、長い助走を経てじわじわ登っている姿には、勝手に身内めいた嬉しさがあります。
「歩」という名は高祖父・国木田独歩に由来
9月7日には『中島歩のオールナイトニッポン0(ZERO)』で初めてパーソナリティも担当しました。俳優としてだけでなく、「中島歩本人」にも関心が向き始めていることの表れです。その素顔を知ると、これまた興味深い人物なのです。
聞けば、中島は明治時代の作家・国木田独歩の玄孫にあたり、「歩」という名前も独歩に由来するのだとか。日本大学芸術学部文芸学科に進学し、文学の世界を目指したものの、学ぶうちに「自分は物語を創作する側には向いていないことに気づいた」と本人が語っています。むしろ、大学の落語研究会で、すでにある物語を自分なりに表現する方が性に合い、人前に立つことにも面白さを感じるようになったのだそうです。
作家・国木田独歩の玄孫が文芸学科に入り、「書く側」ではないと気づき、落語を経て「演じる側」へ。その経歴そのものも、力まない中島の演技に重なります。
モデル活動を経て、俳優デビューしたのは2013年です。美輪明宏主演・演出の舞台『黒蜥蜴』のオーディションに合格したことが、俳優としての最初の大きな転機になりました。
ただ、デビュー後すぐに順調な俳優人生を歩んだわけではありません。仕事が安定しない時期も長かったといいます。
1988年生まれで、30代後半で迎えたブレイクには、遅咲きならではの味があります。『Tシャツが乾くまで』で樹生があずさに向けた「ね?」の一言は、まさにそう。多くを語らずとも、その一文字に含みを持たせた芝居がありました。
派手に前へ出るわけではない。それでも、声とその間まで耳に残っている。そんな俳優だからこそ、いま改めて中島歩に惹かれる人が増えているのでしょう。


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