そんな著者がさまざまな先行研究や法的専門知識を踏まえ、PEに対する抗議や封じ込めは可能であると主張するのが本書である。「私自身が経験したからこそ、抗議活動には効果があると言えるのだ。それゆえ、自分のできる範囲でぜひ声を上げてほしい。……最も重要なのは、絶望や虚無主義に屈しないことである。」(358頁)と。
絶望や虚無主義に陥りそうな毎日の中で、これは何とも勇気づけられる呼びかけではないか。
現代版のマネー・トラストか
そもそもPEとは何か。正確にはPEファームというビジネスモデルであるが、わずかな自前の資金に多くの投資家の資金、多額の借入金を加えて企業を買収し、2~3年という短期間で転売できるよう、買収した企業のビジネスを変えていくものである。
一見すると単純な企業買収に思われるが、そうではない。買収における借入金は買収先の企業に課される多額の債務で賄い、取引を行ったり助言を与えたりしてその度に手数料を取り、しかし買収後もその企業を「所有」しておらず投資ファンドに助言しているだけだとして、法的、金銭的責任を免れる。こうして買収された企業がしばしば破産に至るという現実がある。
バルーが特に問題視するのは、PE業界が経営的専門知識をうたい文句にし、PEと名乗らないものも含めて巨大な、大きすぎて潰せない規模に膨れ上がり、アメリカの金融支配を担いつつある現状である。
法的に厳密には買収した諸企業を所有していないとはいえ実質的には支配し、その従業員数はPE業界大手の3つ(KKR、カーライル、ブラックストーン)で、何とウォルマート、アマゾンに次いでそれぞれ米国第3、4、5位を占める。
ところがPE業界は、買収する多様な企業の事業に関する知識を持たず、また持とうとする関心もない。膨大な数の従業員たちを救うのではなく、ただ金銭的に締め上げて苦境に陥らせるのである。その悪辣さは数々の事例でたっぷりと示され、本書を読み進めるのが次第につらくなるほどである。


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