いっぽう取得率が上がっただけでは、根本的な問題は解決しない。女性の育休取得率は8割を超えており、依然として男性との差は大きい。期間も男女で異なる。男性は「1〜3カ月未満」が最多で全体の3割を占めるのに対し、女性は「12〜18カ月未満」が最多となっている。
つまり「取る人」は確実に増えた。しかし、その期間は、締め切りが遠い仕事を先送りするにはちょうどよく、締め切りが本人の復帰前に迫ってくるほどには長くない。冒頭の人事部の男性も、まさにこの「中途半端な長さ」に足をすくわれた一人だと言えるだろう。
「男性育休」取得中の任せ方について
彼のケースにおいては、同僚の善意が足りなかった、という話ではないと私は思う。原因は、もっと構造的なところにある。
(1)複数の仕事を、それぞれ別の同僚に「お願いします」と振り分けただけだった
(2)いつまでに、どこまで進めるかという具体的な期限が、誰とも共有されていなかった
(3)休んでいる間、誰も進捗を確認する仕組みがなかった
一つ一つ見ていこう。
(1)仕事を振り分けること自体は間違っていない。しかし「これ、お願いします」という依頼は、引き受けた側からすれば、あくまで自分の仕事の合間に対応する「サブの仕事」でしかない。優先順位は、どうしても下がる。
(2)「なんとかするよ」という言葉は、心強く聞こえるが、具体的にいつ着手するかを決めていない。締め切りまで余裕がある仕事は、着手日を決めない限り、際限なく先送りされてしまう。
(3)休業中、誰も進捗を確認しなければ、着手されていない事実にすら気づけない。上司も、復帰の日まで3つの仕事が止まっていたことを知らなかった。これでは遅すぎるのだ。
つまり、期間の長さそのものが問題なのではない。締め切りが迫らない限り誰も動かない、という職場の体質こそが、真の問題だったのである。


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