誰も悪気があったわけではない。ただ、目の前の仕事を優先し、締め切りが遠い仕事は後回しにされ続けた。結果、彼は復帰した初日から、3つの仕事を一気に抱え、毎晩深夜まで残業する日々を過ごすことに。あるとき、上司にこうこぼしたという。
「2カ月が短かったんですかね。4カ月とか5カ月とっていたら、さすがに誰かが手をつけないとまずい、ってなっていたはず」
果たして、これは本当に正しい分析だろうか。
「2カ月」は、先送りにちょうどいい長さだった?
結論から言えば、彼の直感は、ある意味では正しい。
もし彼が4カ月、5カ月と休んでいたなら、イベントの準備期間や採用プロモーションの仕込み時期は、確実に迫ってくる。誰カが「さすがに、もう着手しないとまずい」と腰を上げていただろう。
つまり、2カ月という期間は、絶妙に「先送りしても間に合ってしまう」長さだったのだ。締め切りまでまだ余裕があるうちは、人は動かない。締め切りが迫って初めて、重い腰を上げる。これは彼の同僚に限った話ではなく、多くの職場で見られる、ごく自然な心理である。
彼のケースを掘り下げる前に、まずは男性育休を取り巻く実態を、数字で確認しておきたい。
男性の育休取得率の推移を見ると、その伸びは驚異的である。
厚生労働省の調査によると、2020年度は12.65%、22年度は17.13%、23年度は30.1%、24年度は40.5%、そして25年度は50.9%。わずか5年で、取得率は4倍以上に伸びたことになる。制度面でも、取得意向の確認義務化や「産後パパ育休」の導入など、後押しする改正が続いてきた。数字だけ見れば、間違いなく大きな前進である。政府はさらに、30年度には85%という目標も掲げており、育休はもはや「一部の意識が高い人が取るもの」ではなく、標準的な選択肢になりつつある。


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