一方で、15歳の高校受験は、中学受験に比べて通学圏が大きく広がる。居住地の都県だけに選択肢を限定する必要はない。
埼玉県では前述のように偏差値を用いた私立高校の事前相談が広く行われている。神奈川県の私立高校には、書類選考によって合否を判定する入試もある。入試会場に足を運ぶ必要がないため、ほかの高校の受験日程との調整がしやすい。千葉県では5科目入試を実施する私立高校も多く、理科や社会を含めてバランスよく学習してきた受験生にとっては、選択肢になりうる。
では、併願基準に届かなかった場合はどうするか。私立高校の個別相談会では、加点項目や、ほかに評価の対象となる材料がないかを確認しておきたい。模擬試験の結果などを持参したことで、一定の考慮をしてもらえたケースもある。
どうしても併願基準を満たせない場合には、当日の筆記試験を中心に合否が決まる「オープン入試」も選択肢になる。
ただし、ここにも注意点がある。
各高校がオープン入試にどれだけの募集枠を残しているのかは、必ずしも外からは見えない。推薦や併願で募集枠の大半が埋まり、オープン入試の枠がごくわずかになっている高校もある。逆に、オープン入試で一定の募集枠を確保している高校もある。
だからこそ、「併願基準に届かないから受験できない」と早々に諦めるのではなく、その高校がどのような入試枠を設け、実際にどれだけの募集を行っているのかを確認することが重要になる。
公立高校に「併願」という選択肢を
行政にも、注文をつけておきたい。
私立高校が「併願」の受け皿としての役割を担いきれなくなりつつある現実を、行政は直視する必要がある。もはや、公立高校同士の併願制度を含め、これまでの高校入試の枠組みそのものを真剣に見直す段階に来ているのではないか。
文部科学省では、デジタル技術を活用し、複数の公立高校を志望できる「デジタル併願制」の検討も始まっている(公立高校の併願制の是非については、こちらの記事『注目の「公立高校の併願制」、"新たな恩恵"と"偏差値至上主義の助長"への懸念 個性の時代に合った公平な制度をつくるには?』も参照していただきたい)。
このままの状況を放置すれば、私立高校の授業料無償化政策が、意図とは逆に教育格差を拡大させることにもなりかねない。高校入試の「建前」と「実態」の乖離を長年見過ごしてきた行政に、責任の一端はある。
高校進学が事実上、全員進学に近いものとなり、私立高校が「併願」という安全網を担い続けることが難しくなった今、必要なのは、現場の慣行に制度を合わせることではない。
私立高校の「確約」や「併願」に依存しなくても、すべての受験生が公的にセーフティネットを担保され、正面から高校を選び、安心して挑戦できる。そんな高校入試の透明な仕組みを、行政がつくり直す時期に来ている。


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