もちろん、管理側が何も対策していなかったわけではない。水資源機構は台風接近前の17日から予備排水を始め、22日午後10時までに約4500万立方メートルを排水するなど対応を続けていた。それでも流域では300ミリメートルを超える記録的な降雨に見舞われ、計画の想定を超える雨量となった。
先ほど述べたとおり、筆者が印旛沼の堤防決壊を知ったのは帰宅後だった。パソコンを開き、23日午前0時52分に配信された毎日新聞の「堤防決壊で千葉・印旛沼が氾濫」という記事を読んで初めて知った。そこでようやく、帰宅途中に遭遇した道路閉鎖の背景が一本につながった。
走行中にはNHKラジオも聞いていた。しかし少なくとも筆者が聞いていた範囲では、経路を根本から変更しようと判断できる「堤防決壊」という情報には接しなかった。
もちろん、携帯していたスマートフォンやタブレットでニュースをくまなく検索し続ければ、情報にたどり着けた可能性はある。しかし、運転中にそれを行うことは現実的ではないし、安全上からもやるべきではない。
当時知りたかったのは「通行止めの場所と、その理由」
当時、筆者が確認した国土交通省の河川情報では、印旛沼周辺よりも千葉県佐倉市周辺のほうが危険度の高い表示に見えた。そのため素人判断ながら、むしろ佐倉市周辺のほうが切迫しているのではないかと考えていた。
印旛沼が歴史的に水害に悩まされてきた地域であることを思い出したのも、堤防決壊の事実を知った後だった。
翌23日、成田市は「正午時点」の道路情報をSNSで発信した。そこには「印旛沼の堤防決壊の影響により、安全確保のため」と理由を明記したうえで、国道464号の台方~北須賀方面、北千葉道路の松崎~北須賀方面を全面通行止めにしていると書かれていた。
筆者が前夜に欲しかったのは、まさにこの情報だった。
単に「通行止め」という看板を見ただけなら、ドライバーは周辺の別の道を探そうとする。しかし、「堤防決壊の影響で周辺道路を安全確保のため封鎖している」とわかれば、「この地域そのものへ入らないほうがよい」と判断できる。
道路規制という「点」の情報と、重大災害が発生している地域という「面」の情報を、どう結びつけるか。その違いは大きい。
筆者はラジオ放送局の運営に携わる無線従事者でもある。災害時であっても放送を止めないため、必要であれば局へ向かわなければならない場合もある。だからこそ単なる通行止め情報だけでは足りない。どの経路なら極力危険を避けて目的地まで到達できるのかという交通情報が必要なのである。


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