ーー介護業界のさまざまな課題が改善されるためには、何が必要でしょうか。
前述の通り、現行の制度改革と事業者の倫理観の問題は前提としてありますが、加えて被介護者本人と家族の意識の変化が必要な部分もあります。これまでは、親の介護は子や家族がするものだと考えられてきました。でも、果たしてそうなのか。社会全体で改めて考える必要があります。
漫画だからこそリアルに生々しく描ける介護の裏側の闇
ーーこれまでのノンフィクション作家としての執筆記事とは異なり、本作では漫画で物語として介護問題を発信しています。その意義をどう考えますか。
ノンフィクションでは書けないことを描けるのは大きな違いです。提示する内容の奥行きが深まります。
たとえば、前述の貝塚京子のモデルの人がどこに住んでいて、どういう人かを僕は知っています。でも、本人には会ったことがない。ところが、漫画で描くと、貝塚京子という人間の物語が走っていく。ノンフィクションでは書ききれないディテールや、その人の外部からは見えない部分も含めて、立体的に映し出される。そこには情感を伴う物語ならではの訴求力があります。
今回初めて漫画原作を手がけて、とてもおもしろいと感じた部分です。
本作は、介護を入り口にして、老いや人生とは何かを問いかける内容になっています。そこには、介護を舞台にしたドロドロの人間ドラマがあり、ミステリアスな物語でもあるので、幅広い層に興味を持っていただけると思います。介護なんて考えたこともないという若い人をはじめ、これから介護を控える人などたくさんの方々に手にとっていただけると嬉しいです。
ーー社会問題に切り込み、それを世の中に伝えていく原動力を教えてください。
そんな大したものはなくて(笑)。もともと楽しそうだからメディアで仕事をしたいと思っていました。それは今でもあまり変わっていなくて、社会問題を取り上げながらも、それで社会を変えてやろうとは思っていません。ここにこういう問題がある、という材料を世の中に誠実に提示していく。そこから人それぞれが考えてくれればいい。それがノンフィクションの役割であり、自分の仕事だと考えています。


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