窪田:一方で大人になると、次に何をするかを決め、予定に沿って動く時間が増えますね。
大川内:そうですね。大人の「遊び」が食事や飲み会だけになってしまうと、時間を忘れて何かに没頭する機会は減っていきます。子どもにも大人にも、自分なりに興味を深め、時間を忘れて没頭できる遊びが必要なのだと思います。
窪田:子どもがそうした遊びに没頭できる余白を、大人はどう守ればよいのでしょうか。
大川内:親が「よい人生」を過度に設計しすぎないことも大切です。よい大学に入り、よい就職先に就き、家庭を築くという人生が、これからも同じように幸せにつながるとは限りません。技術の変化が速いなかで、親世代の正解をそのまま子どもに当てはめることには、無理があると思います。
子どもに必要なのは「小さな想定外」
窪田:私自身、人生では想定外ほど面白いと感じてきました。旅行でも、最初に着く空港のホテルだけは取るけれど、あとは出たとこ勝負にする。予定外の出来事のほうが、記憶に残る経験になることがあります。
大川内:窪田先生のお子さんにも、そうした想定外を経験させることを大切にしてきたのですか。
窪田:子どもが小学生のときに無人島のキャンプに参加させたことがあります。カヌーで移動し、決められた時間内に渡り切ることや、何もない場所で火を起こして野宿のような体験をすることが求められたそうです。あらかじめ正解が用意されていない場面で、自分で判断し、工夫する経験は大切だと感じます。
大川内:大きな危険は避けながら、自分で対処できる程度の小さな失敗や不確実性を経験することですね。
窪田:そうです。世界は本来、不確実性が高いです。1年後、5年後に何が起きるかはわかりません。そのなかで自分で判断し、生きていく小さな経験を子どもに積ませることは、非常に重要だと思います。
大川内:人類学のフィールドワークも、まさに想定外の連続です。研究計画を立てて現地へ行っても、考えていた儀礼が行われていなかったり、地図に記された場所を訪ねても、集落が見つからなかったりする。このように最初に立てた問いがそのまま使えなくなったとしても、現地で起きていることを見ながら、日々問い直しながら過ごします。



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