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政治・経済・投資 #小幡績教授のアフターエコノミクス

本家ケインズ『一般理論』が捨てた本質と決定的な誤り…ケインズの本質を救い出す〈小幡理論体系〉をここに示そう

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ケインズの本質を復活させた小幡体系(右・ケインズ:Bettmann/GettyImages、左・小幡績教授:梅谷秀司撮影)
  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
※本記事は2026年9月29日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

INDEX

ケインズ『一般理論』を誰よりもシンプルに明快に数理モデル化していたのが、根岸隆・東京大学名誉教授、私の指導教官である。この15年間、ケインズの『一般理論』以上に感動しながら繰り返し読んだのが、根岸隆『ケインズ経済学のミクロ理論』(1980年、日本経済新聞社)である(Negishi,T. Microeconomic foundations of Keynesian macroeconomics, North-Holland, 1979が専門的なもの)。

コンパクトに、しかし、網羅的にかつ深く、理論モデル化されている。これほど美しい理論モデルと論理は、ケインズのモデル化ではあり得ない(根岸先生の出世作の論文も経済学でもっともシンプルで美しい論文の1つと言われている)。しかし、これが、経済セミナーという学部生も読む雑誌の連載だった、というのは驚きというか、あっけにとられるというか、表現のしようがない。

なぜ、もっと先生から学ばなかったのか。直接お話しし、質問し、議論できる機会があれほどあったのに、今さら、本を完全には理解できず、また、先生の想定している、包括的な「根岸隆体系」というものをもっとお聞きしなかったのか、反省しても反省しきれない。

根岸隆こそ、戦後、経済を体系的に捉え、それを生涯をかけて、一つ一つの論文を積み木のように積み重ねて完成させようとしていた、最後の学者、最高の学者であったことに、私は21世紀になって気づいた。

根岸隆先生の素晴らしい言葉

後悔していても仕方がないので、経済セミナーの連載だったのも何かの示唆だと思い、この連載で、アカデミックの正式な土俵には乗らないが、喫茶店レベルであっても、全力で、経済の真理に近づく努力をしたい。そのためのケインズ議論であり、そこからの経済理論体系構築の試みである。

私の行為をなぞらえては、根岸先生の素晴らしい言葉を穢すことにもなりかねないが、皆さんにその素晴らしい言葉を伝えてから、議論に入りたい。

たとえばアダム・スミスが言ったこの真意は何であるかということを確定することが非常に重要なのはもちろんである。しかし、ここではこのような歴史家的観点とは全く異なる非歴史家的観点、すなわち、もっぱら現代の経済理論の研究に関心を持つ者のきわめて利己的な観点から経済学史の意義を考えよう。このような観点からは、過去の理論のある特定の解釈が正しいかどうかではなくて、それが現在において新しい理論を発展させようというときに有用であるかどうかが大事なのである。…(中略)
…埋もれていた過去のある理論が現在において支配的な理論のある側面をすでにひっそりと展開していたという類のことを発見することには興味はないのである。われわれが求めているのは新しい理論を発展させるのに助けになるような過去の理論である。(根岸隆『古典派経済学と近代経済学』第1章 1981年、岩波書店)

気持ちだけはまったく同じである。

いまのエコノミクスの常識からかけ離れた小幡体系のカギとは

小幡体系の重要要素の1つは、金融市場および利子率に対する考え方である。

ポイントを挙げると、

1:実物資本市場と金融市場はほぼ分断されている。

2:金融市場は、マネー、債券市場、株式等リスク資産市場の3つに分かれていて、債券市場と株式等リスク資産市場はほぼ分断されている。

3:利子率は、各市場で異なる。つまり、分断されているそれぞれの金融市場では、別々の利子率が成立しており、実物資本市場で成立する利子率も別のものである。

4:名目利子率のみ存在し、実質利子率というものは存在しないし、その概念を否定する。

この前提4は、現在の経済学、あるいは金融市場関係者、エコノミストの常識からかけ離れているが、これこそが真実だと思っている。

金融市場に関する理論的な議論が、現実の動きを説明できないほとんどの理由は、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利というものが存在するという認識(誤解)から来ている。

さらに言えば、彼らのインフレや物価水準というものの捉え方自体が間違っていると思うのだが、別の議論になると思われるので、ここでは議論しない(改めて議論したい)。

財市場と金融市場は分断されている。金融市場もまた分断されている

さて、しかし。この利子率の考え方は、小幡独自の画期的なものだと、リーマンショック以来ずっと思っていたのだが、ケインズを考え直す中で、ヴィクセルの自然利子率の議論と非常に近い考え方であることに15年前に気付き、がっかりした(学部の時にヴィクセルは岩井克人先生の影響で勉強したはずなのに……)。

まあ、オリジナルであろうと何であろうと、構わない。ヴィクセルの実物利子率(つまり、自然利子率だが、実物利子率という言葉の方が、私のモデルに直接関係する)、および、ヴィクセルの理論に影響を受けたケインズ理論と、私の考えは、同じ側にいる(現在の経済学の対岸にいる)。

そうなると、ケインズ理論と何が違うのか、ということになるが、ケインズ理論が財市場と金融市場とその相互関係という3つの要素からなるのに対して、小幡体系の1つの特徴は、財市場と金融市場は分断され、かつ金融市場の中の債券市場と株式市場は分断されている、と考えていることだ。

ケインズ理論と対比してみると

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