陸上競技種目にたとえると、脳卒中や心筋梗塞で亡くなる人は“短距離ランナー”で、終末期のがん患者は“中距離ランナー”。亡くなる原因となるドラスティックな病変が起こりにくい慢性疾患や認知症ならば“長距離ランナー”だ。認知症の場合、前編で紹介したKさんのように機能が低下した状態が長くゆっくりと続く。
終末期のがん患者の死へ道筋は、「がんが大きくなったから死ぬのではなく、抗がん剤で身体が弱るか、痛みで身体が弱るかのどちらかで死ぬ」という。
萬田氏の患者はほとんどが中短距離ランナーのがん患者。しかし、その道筋は、治療をやめて、医療用麻薬を使って痛みをコントロールし、最期の日まで穏やかに寿命を生き抜くというものである。
「がん患者は、最後は何カ月も寝たきりになって苦しむという悲痛なイメージを持つ人が多いようですが、最期まで目一杯生きるという意志が強い患者さんは、亡くなる前日まで元気でいることを目標にしています。自力でトイレにも行き、歩けなくなるまで歩こうとかなりがんばります。歩けているうちは死にません」
終末期に現れる「身体のサイン」
そして、いよいよ歩けなくなったら、余力も気力も尽きてさらに弱っていき、寝たきりになってから1日から最大1カ月くらいで亡くなっていくという。
「寝たきりにならずピンピンコロリが叶うとすれば、終末期のがん患者。亡くなるぎりぎりまで歩く努力ができれば、動けなくなったらあっという間です」
一方で長距離ランナーの慢性疾患の患者であっても、萬田氏の寄り添い方はがん患者と変わらないという。患者の希望を叶え、介護する家族を疲弊、悲嘆させないためにケアをし、患者が望まない治療から遠ざける。
「残っている身体の機能を治療によって不要に傷つけなければ、患者さんのQOLを少しでも維持できるし、介護者の負担軽減にもつながります」


※ログイン後、コメント入力が可能です。