自然科学では、何かを測ったり推定したりするときに、1つの数字だけを示せば十分とは限りません。どの程度の確率で起こりそうなのかや、その値をどのくらいの幅で見ればよいのか、などをあわせて示すことがあります。
身近な例では、天気予報の降水確率があります。「明日の降水確率は60%」という予報は、「明日の天気はよくわからない」という意味ではありません。雨が降る可能性を、観測や計算に基づいて確率として示しているわけです。
気候予測でも同じです。前に見た世界平均気温の図では、複数のシナリオごとに2100年までの気温変化が線で示されていました。これらは、マルチモデルアンサンブルの平均として求められています。
その中で、温室効果ガスの排出が多いSSP3 7.0と、排出を大きく減らすSSP1 2.6については、それぞれの線の周りに陰影をつけています。この陰影部は、そのシナリオのもとで世界平均気温の上昇がどのくらいの範囲に入る可能性が非常に高いかを、モデル間のばらつきをもとに示したものです。中心となる見通しを一本の線で示し、その周りに予測の幅を示している、と考えればよいでしょう。
むしろ、将来の気温上昇を1つの数字だけで示し、その幅を示さないほうが情報としては不十分だといえるでしょう。どのくらいの範囲で考えるべきなのかがわからなければ、その数字をどう受け止めればよいのかも判断しにくいからです。
気候予測の不確実性の3つの種類
気候予測の不確実性は、大きく3つに分けて考えることができます。
1つ目は、シナリオの不確実性です。
将来の社会がどれだけ二酸化炭素などを排出するのかは、あらかじめ決まっていません。脱炭素が進むのか、化石燃料への依存が長く続くのかによって、将来の気候は変わります。これは、気候科学そのものが未熟だからではなく、未来の社会の選択がまだ行われていないために生じる幅です。
2つ目は、モデルの不確実性です。前に説明したように、同じシナリオを使っても、雲や乱流などをモデルの中でどう表すかによって、結果に少し幅が出ます。
3つ目は、自然変動の不確実性です。気候には、もともと自然のゆらぎがあります。ある年がとくに暑かったり、逆に少し涼しかったりすることは、温暖化の長期的な傾向の上に、自然変動が重なって起こります。


※ログイン後、コメント入力が可能です。