例えば、上司に頼まれて報告用スライドを作る場面を考えてみます(図1.3)。
「AIに資料作成を頼めないか」と思い立ったとき、まず頭に浮かぶのは、点線で囲んだ範囲、つまり参考資料を集めてスライドの中身を形にするあたりです。しかし実際の仕事は、依頼を受けて意図を確かめるところから始まっています。着手の直前には、似た依頼と取り違えないよう、これまでの経緯を掘り起こして詳細を確かめ直します。できあがった後には、直近にほかの資料で受けた指摘も思い出しながら自分の目で見直し、提出場所へアップロードして依頼主へ連絡する、というところまで仕事は続きます。
「資料作成」と切り出して頼んだ瞬間、こうした前後の部分は、無意識のうちに依頼の対象から外れてしまいます。「切り出しすぎ」は、1つの作業の中でも起きるのです。
本稿のやり方なら、確認したい意図の洗い出しも、提出前の抜け漏れチェックも、送る連絡文の下書きも、AIに相談しながら進められます。人間が自分の手で行うのは、最後の仕上げと、提出という確定操作だけです。本稿ではこの分担を「半自動化」と呼びます。
「壁打ち」を何度も繰り返し、作法を少しずつ蓄積させる
半自動化のもう1つの要点は、一度やって終わりにせず、サイクルとして回すことです。いきなり完成品を書かせるのではなく、まずAIエージェントに骨子を作らせます。
人間は出てきた叩き台を眺め、「この順番は逆のほうがいい」「この言い回しはうちの部署では使わない」と、気づいたことをそのまま返します。直ってきたものへまたコメントを返す、いわゆる「壁打ち」を何度も繰り返し、意図が伝わった状態で仕上げさせて、細かく直させます。そして直しの指示をAI自身に書き留めさせておくと、あなたの好みや職場の作法が少しずつ蓄積され、次からは最初の一発目から7〜8割の品質で上がってくるようになります。


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