さて、安否確認&コミュニケーションの夕食に続き、興味が湧くのは居室のミニキッチンで作るひとりご飯である。
前出の後藤さんの居室にお邪魔した。大きな家具はベッドとソファくらい。食事用のテーブルと椅子が1脚。「おひとり様の食卓でしょ」と笑う。
結婚から七十数年を経た今、「自分1人のための食事」を作る
ご主人を看取ってから二十数年、おでんせがある駅そばのマンションに長い間ひとり暮らしをしていた。3年前に自分が死んだときの段取りをすべて済ませ、身の回りのものだけを持って、入居したという。
長男の嫁として必然的に大家族の食事を作らなければいけない生活を何十年もしてきた。やがて子どもが独立し、義父母を看取り、夫婦2人の食卓となった。そして夫を看取り、結婚から七十数年を経た今、「自分1人のための食事」を作る。
後藤さんの本日の昼食は、作り置きと作りたての3品とご飯、味噌汁。料理の説明を聞いた。
「これは菜っぱ煮と呼んでいる、うちのおばあちゃんの得意料理。おばあちゃんは料理人で、何を作ってもおいしいのですが、この菜っぱ煮は私も昔から大好きでパクパク食べていました」(後藤さん)
“おばあちゃん”とは後藤さんの姑のこと。一緒に暮らしていた当時と変わらず、そう呼ぶ。自慢の菜っぱ煮は小松菜や旬の野菜をどっさり鍋に入れて、酒、しょうゆ、おかかで煮たもの。シンプルで簡単な料理だが、食欲がないときでも、この菜っぱ煮があればご飯を食べられるという。
茶碗半分のご飯は冷凍ご飯を解凍したもの。自宅で家族と暮らしていた頃は、ご飯は必ず炊きたてだった。
「炊飯器は1合から炊けるけど、1合も炊いたら食べきるのに何日もかかっちゃう。大変だからって、お嫁さんが1食分ずつ冷凍にして持ってきてくれるの。お魚の切り身は1切れ焼いて、食べるのは半分」(後藤さん)


※ログイン後、コメント入力が可能です。