“ヨタヘロ期”(健康寿命と平均寿命の間のおよそ10年)もいよいよ終盤の身と自称する後藤千恵子さん(94歳)は、入居3年目。「食べたいのはごちそうじゃないの」と明るく言う。
それ、ほめ言葉ですよね? と念のため確認すると、「そうです」とにっこり。「毎日の夕食が楽しみって幸せなことです」と最大のほめ言葉が返ってきた。
「食事前の挨拶」や「くじ引きでの席替え」でコミュニケーションが活発化
理事長の小森さんが夕食の席で心を配るのは、コミュニケーションだ。コロナ前は大皿を並べたバイキング形式だった。並んで料理を皿に取るとき、「これ、おいしそう」「ぶどうは初物だね」といった会話が生まれ、その流れでテーブルでも味の感想で話が弾んだ。
「それがコロナ禍で黙食になって、3年続いたでしょう。会話が少なくなってしまって、コロナ後もそれが当たり前のようになってしまいました。年を取るとともに、質問される、答えるという会話が面倒になってくる場合もあるんですね。高齢者にとっても、コロナ自粛の3年は想定外の痛手が残りましたね」(小森さん)
だからこそ、夕食をコミュニケーションの場として取り戻したいと、小森さんは奮闘する。“同じ釜の飯”は居住者をつなぐ力がある。今まで自身がやっていた食事前の挨拶を皆の当番制にした。
「ご挨拶がきっかけになって、今まで調理スタッフの名前を覚えられなかった方から、『〇〇さん、ごちそうさまです。ありがとうね』という言葉が出るようになりました」(小森さん)
テーブルの座席は1カ月ごとにくじ引きで席替えをする。「同じ話でも相手が変われば会話も新鮮だし、新しい発見もあったりします」と小森さん。「1カ月よろしく」とか、「あら、また隣同士。気が合うわね」とか、小さな変化が会話のきっかけを作ってくれる。


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