私自身もその話をどこかで覚えていたので、この発想が完全に自分だけのものだったというわけではありません。
今回実際に試してみようと思った直接のきっかけは、GPT-6 AstraがMIDIデータの出力に対応したことが話題になっていたことです。MIDIは、簡単に言えば作曲ソフトに読み込ませる音符のデータのようなものです。
これまでの音楽生成AIは、完成したオーディオを出力するものが中心で、長時間の楽曲を構成したり、画像や図を含むような複雑な指示をそのまま読み取って音楽に落とし込んだりすることは、あまり得意ではなかった印象があります。
そこで、以前からたびたび話題になっていた佐村河内さんの作曲指示書を、現在のより高度な生成AIに読ませたら、どこまで音楽として成立するものを作れるのか試してみたいと思ったのがきっかけです。
──実際にAIに指示書を読ませ、曲を作らせるにあたって、工夫したことや気をつけたことはありますか。
元の指示書画像をそのまま使用することには権利上の懸念があったため、内容をもとに自分で少し整えた画像ファイルを用意し、それをAIに読み込ませました。
また、もともとの指示書は交響曲を想定したものですが、今回はよりシンプルに結果を確認できるよう、ピアノ曲として作曲するよう依頼しました。
AIへの指示自体はかなりシンプルで、基本的には「この画像を読んで作曲してほしい」という内容です。こちらから細かなメロディーやコード進行、曲の展開などを追加で指定したわけではありません。
そのため、画像に含まれている情報をAIがどのように読み取り、音楽として解釈するのかを見る、という形になりました。
「曖昧な注文書ではなく、具体的な設計図に近い」
──実際に曲が出てきたとき、最初にどう感じましたか。
まず驚いたのは、7分程度で、約74分、約2万2000音のMIDIデータが出力されたことです。単純に、その情報量と生成速度にはかなり驚きました。
実際に作曲ソフトでデータを鳴らしてみると、いわゆるポップス的な聴きやすさとはかなり離れていて、不協和音も多く、第一印象としては「現代音楽っぽい」楽曲だと感じました。
一方で、全体の構成や展開には指示書の意図が反映されていると感じる部分が多く、「ちゃんと指示書を読んで作っている」と思えるところもありました。
そうした点も含めて聴き進めていくうちに、最初に抱いた「不協和音が多くて難解な曲」という印象から少しずつ変わっていき、個人的には「案外悪くない、むしろ良い感じかもしれない」と思うようになりました。
noteではあえて自分の音楽的な評価は書かないようにしました。今回やりたかったのは「良い曲ができたかどうか」を判定することよりも、この指示書を現在のAIがどう解釈し、どこまで音楽として形にできるのかを見ることだったからです。聴いた人それぞれに判断してもらったほうが、この実験には合っていると思いました。

