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「メーター3万円の生地」「2回着たら破けるシルクの服」…24歳・繊維研究者が魅了された80年代・DCブランドの《狂気》

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SNOB 市村修蔵
80年代のDCブランドに特化した古着屋「SNOB」の店主・市村修蔵氏(写真:筆者撮影)
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「繊維を専門的に研究してきた立場から見ると、80年代から90年代へ移り変わる端境期の現場の熱量は異様でした。90年代以降、日本のものづくりは効率化とコスト削減のために生産拠点を急速に海外へと移し、国内の製織会社や縫製工場への発注電話は激減していきました。しかし、その直前である80年代の現場は、職人さんたちが連日徹夜で膨大な仕事をこなしながら、信じられないほど実験的なテキスタイルを次々と生み出していた時代でした」

当時の日本アパレルを支えた圧倒的な内需と、作れば作るほどスケールメリットが効く右肩上がりの経済成長は、現代のビジネス感覚では考えられない原価率のものづくりを可能にしていた。

MOSIEUR NICOLEの小林由紀夫さんがデザインを行った時期の一着(写真:筆者撮影)。「ショールカラーの1ボタンジャケットに、絢爛豪華な立体的なジャカード織物を使用している。景気が良く内需が活発だったからこそ許された洋服です」(市村氏)

「当時のインタビュー記事を読むと『メーター単価3万円の生地で洋服を作った』と平気で語られているんです。テーラードジャケットを一着仕立てるのには2メートル強、柄合わせを考慮したらそれ以上が必要です。つまり、生地代の原価だけで6万〜7万円かかっている計算になります。そんな高級仕立ての服を、日本のドメスティックブランドは惜しげもなく量産して店頭に並べていた。その採算度外視の実験精神とテキスタイルのクオリティは、いま見返しても圧倒的です」

その飽くなき挑戦は、時に「実用性」や「耐久性」といった製品としての常識すら軽々と飛び越えていった。

「象徴的な例として、オールシルクで仕立てたセットアップをあえて洗濯機で洗いにかけ、独特の洗いざらしの風合いを出して店頭に並べたところ、お客様が2回着ただけで股が破けてしまったという話があるんです(笑)。現代の品質基準やクレーム対応の観点から見れば完全に製品の定義から外れているものですが、洗いをかけたシルクが見せる唯一無二の表情や、誰も見たことのないものを本気で作ろうとした狂気じみた姿勢には、ものづくりとしての強烈なロマンを感じますよね」

日本の服飾サブカルチャーを世界へ届ける「マフィアカルチャー」の夢

市村修蔵(いちむら・しゅうぞう)/2002年、兵庫県生まれ。信州大学繊維学部在学中に古着屋『SNOB』を開業。80年代のDCブランドを現代的な感性で再評価する活動は業界著名人からも支持され、現在は『POPEYE』などにも定期的に寄稿している。Instagramはこちら(写真:筆者撮影)
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