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「メーター3万円の生地」「2回着たら破けるシルクの服」…24歳・繊維研究者が魅了された80年代・DCブランドの《狂気》

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SNOB 市村修蔵
80年代のDCブランドに特化した古着屋「SNOB」の店主・市村修蔵氏(写真:筆者撮影)
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市村氏は特徴的な一着を紹介してくれた。「ジャズの帝王」ことマイルス・デイヴィスが愛用したことでも知られるarrston volaju(アーストンボラージュ)のアウターだ。

(写真:SNOB提供)

「ここにボタンがあるのに、さらにその上にも装飾パーツが付いている。革紐まで通されていて、何を参考にして設計したのか全く分からないアレンジです。均一な規則性など最初から無視していて、超前衛的ですよね」

現代の若者カルチャーにおいて、この「過剰な足し算」は単なる古臭さではなく、むしろ未知の圧倒的なエネルギーとして目に飛び込んでくる。なぜ当時、これほどまでに過剰なデザインが成立したのか。

「西洋服飾の歴史が浅かった日本人が、自国らしい新しいアパレルを創造しようとした時、貪欲に学んだ知識や要素を『これでもか』とすべて詰め込むというアプローチに着地したのではないかと思います。加えて、当時は経済成長と好景気の熱気の中にあった。社会全体に勢いとゆとりがあったからこそ、デザイナーの奔放な表現欲求がそのまま許容され、消費者の側もエネルギーに満ちた過剰な服を面白がって熱狂的に買い求めた。そうした当時の作り手たちが服に注ぎ込んだ情熱が、私たちの世代にとって鮮烈なカウンターとして刺さるのだと思います」

「メーター3万円の生地」「2回着たら股が破けるシルクのセットアップ」DCブランド全盛期が生んだ狂気のテキスタイル実験

(写真:筆者撮影)

「80年代のDCブランドは、オール・メイド・イン・ジャパンで質が高い」。こうした言説は半ば定説のように語られる。それは果たして本当なのだろうか。信州大学繊維学部で繊維素材やテキスタイルを専門的に学んできた市村氏にその疑問をぶつけると、意外にも「そもそも『良い服』の定義とは何なのか」という根本的な問いが返ってきた。

「当時の消費者のニーズに焦点が合っていたという意味では『良かった』と言えます。しかし、それは『時代を超えて普遍的に誰にでも合う服』を意味するわけではありません。機能性だけで見れば、現代の服の方が吸湿速乾性に優れていますし、30〜40年前と今とでは夏の暑さだってまるで違う。ファストファッションに比べれば当時の生地が贅沢なのは事実ですが、現存しているアイテムは『良いものだからこそ半世紀近く生き残ってきた』というバイアスもあります」

過去を無批判に称賛するのではなく、素材の構造や産業史を冷静に見つめる。その一方で、市村氏が「品質の良し悪しを超えて、当時のものづくりには現代の工業製品基準では到底あり得ない狂気が宿っていた」と語るのが、規格外で実験性の高いテキスタイルである。

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